キングな君は俺だけのクイーン(3) ページ32
.
「…北山はマリに嫉妬なんかしなくていいんだよ。俺が好きなのは北山だけだって、ほんとは自分でもわかってんだろ?」
「は…はい……」
俺の口元を離れた右手は、そのまま流れるように後頭部に回されて、優しく引き寄せられる。
そして、
「だからさ、北山ももうちょっと自信持って。それでも自信が持てないっていうなら…その度に、何度でもキスしてやるよ」
「……!」
耳元でとろけるように甘い声を囁かれた瞬間、俺は心の中で、日本中の藤ヶ谷担と固い握手を交わした。
キングの威力はやっぱスゲーわ。
クイーンでキングって、もはやチートだよ。これじゃあ俺の立場がない。
……とは、全く思わなくて。
立場がないどころか、俺ってつくづく幸せだと思うよ。
「おい、北山」
「は、はいっ!」
「赤くなってる場合じゃねーだろ。お前も俺の彼氏なら、これくらいのことしてみせろよ」
「ハイ…努力します…」
彼女にここまでプライドをズタズタにされたら、普通ならムカッとくるもんだ。
だけど俺は、誰よりもカッコいい藤ヶ谷のファンでもあるから、俺を挑発するその意地悪な笑顔にさえキュンとする。
藤ヶ谷がこんなに嫌味で意地悪な子になるのも、キングとクイーンの両面を見せてくれるのも、全部俺の前だけ。
そう考えたらほら、やっぱ俺って幸せだ。
藤ヶ谷の言う通り、嫉妬なんてするだけ無駄だったのかもしれないな。
そんなことする暇があるなら、俺の女王様を愛す時間に充てないと。
「ふじがやー」
「…なんだよ」
「イルミネーション、綺麗だな?」
「…それが何?」
「でも、藤ヶ谷のほうがもっと綺麗だよ」
「……言うのが遅いんだよ、ばーか」
「んふふ、ごめんな」
世界中のどんな輝きをかき集めても、藤ヶ谷の美しさには敵わない。
それを世界中に知らしめてやりたいと思う反面、俺しか知らなければいいのにとも思う。
綺麗だから、見せびらかしたい。
綺麗だから、閉じ込めておきたい。
そんな相反する感情と上手いこと付き合いながら、俺は今日も楽しく、女王様のしもべライフを楽しんでます。
あと5分くらい経ったら、早く家に帰ってイチャイチャしようって言ってみようかな。
生意気なしもべのおねだりも、今夜くらいは許されますように。
fin.
赤いリボンをほどいたら→←キングな君は俺だけのクイーン(2)
574人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時