ラブリーあまのじゃく ページ28
#2
拗ねてる藤ヶ谷が可愛いからわざと怒らせてる、なんてことは絶対にない。
絶対ないんだけど、藤ヶ谷からしてみれば、そう思うのも無理はないのかもしれない。
女王様のご機嫌を損ねてばかりの、学習しない俺…
そのうち捨てられちゃったらどうしよう。
「ふじがやぁー…ごめんって…」
「うるさい、こっちくんな」
「そんなこと言わないでさぁ、頼むからこっち向いてよ…」
「お前の顔なんか見たくない」
ソファーの上でそっぽを向く藤ヶ谷と、その足元に跪いて許しを請う俺。こんな構図になっているのは、言うまでもなく俺のせい。
「今日はわたとご飯食べてくるから」って、そう言われて藤ヶ谷を送り出したのが5時間前。
その後ドラマの共演者から連絡が来て、飲みに出かけたのが4時間前。
「今から帰る」と藤ヶ谷からラインが入ったのが3時間前で、俺がそれに気付いたのが1時間前。
そして、ついさっき顔面蒼白で帰宅した俺を待ち構えていたのが、ソファーで毛布にくるまってぶすくれる女王様だった。
共演者と話が盛り上がって時間を忘れていたせいもあるけど、藤ヶ谷が横尾さんといてあんなに早く帰ってくるなんて思わなかったから、正直油断してた。
女王様を2時間も放置するなんて、俺はとんでもない命知らずだ。
「連絡できなくてごめんな?」
「ふん。どうせ盛り上がって俺のことなんか忘れてたんだろ」
「忘れてなんかないけど…でも気付くのが遅れたのは事実だから、言い訳はしないよ」
忘れるどころか、話題の中心はいつの間にかうちのグループのことになってて、みんなが藤ヶ谷をカッコイイと褒めてくれるのが嬉しくて、つい語りすぎたくらいなんだけどね。
もちろん俺たちの関係は秘密だけど、同じグループのメンバーとして藤ヶ谷の魅力をアピールしまくる俺に、みんなが「藤ヶ谷さんの一番のファンは北山くんだね」って言ってくれたんだよ。
それで気分が良くなって飲みすぎて、その結果藤ヶ谷を怒らせたんじゃ意味ないけどさ…。
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作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時