PM20:15 小説／恋愛(7) ページ23
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「…北山さんは、俺のイメージよりもずっと素敵な人でしたよ。実際にお話できて、ますます魅力的だなって思いました」
「え…ぁ、ありがとうございます…」
俺の「オーラ」発言に肩を震わせて笑っていた藤ヶ谷さんは、ふと優しい表情に戻ると、なんともキザでカッコいい言葉をなんの躊躇いもなく口にした。
それに対して、また気の利いた返しもできず、俯くことしかできない俺。藤ヶ谷さんは人を照れさせる天才なの？
あんなセリフを男の俺にまでサラッと言えるあたりが、イケメンがイケメンたる所以なのかな…
なんて、そんなどうでもいいことを考えて現実逃避している俺は、やっぱりちょっと舞い上がってるのかもしれない。
だって、藤ヶ谷さんに会ってからこの短時間に、うっかり何度も心臓が飛び跳ねてる。
この人の優しい笑顔を前にすると、小説の中で何度も疑似体験した感覚が、一気にフラッシュバックするんだ。
主人公が恋に落ちる瞬間の、周りの景色が一斉に色付いていくような、あの感覚が。
「またお店に来た時は、話しかけてもいいですか？」
「あ、それはもちろん…いつでも声かけてください」
「ありがとうございます。この本を読み終えたら、また来ますね」
そう言って、手にしていた本を軽く持ち上げて微笑んだ藤ヶ谷さんと一緒にレジへ向かう。
カウンターにいた安井くんには案の定いつもの反応をされたけど、それよりも、俺と一緒にいた藤ヶ谷さんを見て少し驚いたような顔をしたのが気になった。
安井くんは、藤ヶ谷さんのことを知ってるのかな。
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作者名：いちはら
| 作成日時：2015年12月20日 19時
