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PM14:20 特製半熟オムライス(3) ページ11

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「今回もまた断ったの?」

「うん、断ってたねー」



ここの店長は、今までどんな媒体の取材も受けたことがない。いわゆる取材NGってやつ。

特に今回みたいに、カフェじゃなく店員を狙って来る女性ファッション誌なんてもってのほかだろう。

でもそんな店長の方針のおかげで、俺はいつもこうやって、大好きな友人とのんびりした時間を過ごせてるんだよな。




「…でも、ちょっと残念かも」

「何が?」

「取材の話。だって、雑誌に載ったらそれが本屋さんで売られるわけでしょ?」

「そりゃあそうだよ」

「そしたら、ミツの本屋さんにも置かれるんだよね?俺が載った雑誌、ミツに並べて欲しかったなーって。ポップとか書いてもらってさ」

「玉…」



なんてね、と照れくさそうに笑った玉の顔は、それこそ雑誌の表紙を飾れるくらいに可愛かった。ここに出版社の人がいなくてよかったって、本気で思ってしまうくらい。

でも悪いけど、俺は玉が載った雑誌を店に並べるなんて、絶対にお断りだ。



「俺は店長さんの判断に感謝だけどなぁ」

「えー?なんで?」

「だって、玉たちが雑誌に載ったら、今以上に女性客が押し寄せるだろ?そしたら、こんな風にゆっくりできなくなるじゃん。そんなの絶対やだ」



女性客にとってはきっとパラダイスなこの店は、俺にとってもすごく大切な場所なんだ。

雑誌に載って編集された玉を眺めるよりも、こうやって呑気な顔を見ながら、いつまでもくだらない話で盛り上がっていたい。


こんなの、ただのワガママだってわかってるけど…この店にはずっと、俺の憩いの場でいてほしいから。



「ミツってば、そんなに俺のこと…!嬉しい!」

「いだだだだ!痛いって玉!」

「ミツ〜!俺もミツのこと大好きだよ!」

「わかったから離せって!つーか俺もってなんだよ!?」



グラスをひっくり返す勢いで立ち上がった玉が俺の隣に突進してきて、ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。

女性客の「羨ましい!!!」っていう視線が突き刺さって、ダブルで痛い。



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作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時

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