まいにちふじきた(たまにきたふじ) (ページ11)

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11. 今日は何の日【Y side】ページ11

楽屋での太輔はテンションが高い。

今朝はいつにも増して元気で、大事そうに抱えた棒状のお菓子を二種類同時に食べて「コレ合う～！甘さと塩気のバランスが絶妙！」と独り言を言いながら一人でニコニコしている。

機嫌が良すぎて気味が悪いくらいだ。

「わたも食べる？美味しいよ！」

「いや、俺はいい…」

「そう？」

どうやら今日は俺にすら興味がないらしい。

つまんだ菓子をあっさり引っ込めた太輔は、それをウサギみたいにちまちまと食べ進めながら、まだここにいない想い人の名前を呟いた。

「北山、早く来ないかなぁ…」

そんな太輔の願いが通じたのか…

「うぃーっす」

「おはよぉ～」

まだ眠そうなミツとニカが、揃って楽屋に入ってきた。その途端、ニカを突き飛ばす勢いでミツの腕に絡みつく太輔。

そんな太輔にはすっかり慣れっこで、特に気を悪くするでもないニカとは違い、ミツは未だに太輔の熱烈アピールには慣れないらしい。

「北山、おはようっ！」

「お、おぅ、おはよ…。なんかお前テンション高くね？」

「当たり前じゃん！今日何の日か知らないの？」

引きずるようにしてミツを隣に座らせた太輔は、そう言ってお菓子の箱を掲げる。

その瞬間、ミツも俺も、ご機嫌すぎる太輔を不気味がっていた他のメンバーも皆、太輔がなぜこんなにハイテンションなのかを悟った。

「ポッキーゲームならお断りだからな」

「は？ポッキーゲーム？そんな古い遊びやらないよー」

「えっ！？」
「「えっ！？」」

予想外の太輔の言葉に、ミツも俺達も驚いて声を上げた。
太輔はミツとポッキーゲームがしたかったんじゃないのか…！？

「よ、横尾さん…ポッキーゲームってもう古いの…？」

「いや…まだ大丈夫じゃないかな…」

古いと言われたことにジェネレーションギャップを感じてショックを受けているミツと、30代同士慰め合う。俺達も同じものを想像したんだから、大丈夫だよ。

一方太輔はそんなミツの手を取って、眩しいくらいの笑顔で謎の呪文を唱えたのだった。

「今日は、『ポッキーインザプリケツの日』だよ！」

「……は？」

「だからね、今日は…」

俺のポッキーを、北山のプリケツにインする日だよ？

そんな囁きとともに、太輔はミツの尻をむぎゅっと掴んだ。

「ひっ…！」

「今日こそ北山のココに…むふふっ…」

「「……」」

暴走する太輔の姿を見ながら、俺達が思うことはただ一つ。

グ◯コさん、申し訳ありません……。

end.