キタヤマボックスR② (ページ2)

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Tonight is the night.(2) ページ2

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「…マスター、こちら先ほどのお客様の忘れ物だと思うのですが、確かマスターのご友人でしたよね？ご連絡を差し上げたいのですが…」

馴染みの客との会話が一区切り付いたのを見計らい、マスターに声をかける。

いくらマスターの友人とは言え、客の忘れ物一つに食いつき過ぎだと不審に思われるだろうか。問いただされたら何と言い訳しよう、と今さら不安になって、ピアスを乗せた手のひらに汗がにじむ。

けれどマスターの言葉は、俺の予想を遥かに上回る突飛なものだった。

「あぁ、それ多分あいつのだね。もしかしたら大事なものかもしれないから、今から追いかけて渡してきてくれない？」

「えっ…！？」

思いもよらない提案に固まる俺をよそに、マスターは「これあいつの連絡先ね」と言いながら一枚の名刺を渡してきた。

そこに書かれていた会社の名前に、俺は今日一番の衝撃を受けることになる。

「…取引先の方、だったんですね…」

「ふふ、びっくりした？あいつはうちの担当じゃないから、知らなかったよね」

「はい…」

呆然とした気持ちで、手元の名刺をまじまじと見つめる。

毎日帳簿で目にする仕入先と同じ社名、立派な役職…そして、初めて知る彼の名前がそこにあった。

名刺の隅に小さく書かれた電話番号の下には、手書きの文字で並ぶ十一桁の数字。無意識にそれを凝視していた俺に、マスターは心なしか嬉しそうな声で、それは私用の携帯だよと付け加えた。

マスターは、おそらくすべてを知っているんだろう。声色がそう語っていた。

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