365+1の約束(4) ページ9
.
「ふっ。鼻の頭、真っ赤になってるぞ」
「………」
腕枕をしているのは俺なのに、北山が向けてくる視線があまりにも余裕たっぷりで、なんだか俺のほうが甘えてるみたい。
それが少し悔しかったから、さっき北山がくれた言葉を、小さく声に出してみた。
「……あいしてる」
「！」
「はじめて言ってくれたね？」
「…そうだっけ？」
「そうだよ！」
明後日の方向を向いてとぼける北山を抱き寄せて、強引に視線を絡ませる。
途端に狼狽えて真っ赤になる顔に満たされた気持ちになりながら、俺はその熱い頬にそっと手を触れた。
「すっごく、うれしかったよ」
「…泣くほど？」
「ふふ…うん、泣くほど。」
「…そっか。それなら、言った甲斐あったわ」
頬に添えた俺の手を包み込むように、北山のあったかい手が重なる。
どちらからともなくおでこをくっつけ合うと、少し照れくさそうに、でもすごく優しい顔で笑った北山の瞳に吸い込まれるようにして、目尻に浮かんだ笑い皺にキスをした。
「ねぇ、これからはさ、出し惜しみしないでたくさん言ってくれていいんだよ？」
「絶対やだ。お前じゃあるまいし」
「えー、そんなの不公平じゃん」
「いいだろ別に、今までだってそうだったんだから」
「それはそうだけどさぁ…」
北山が俺に「あいしてる」と言ってくれた、あの瞬間の感動が忘れられなくて、ダメ元でおねだりしてみる。
断られるのはわかってたし、あの一言だけであと10年は頑張れそうなほど満たされたから、別に本気でぐずってるわけじゃない。
……それなのに。
北山は本当にずるいんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 612人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちはら
| 作成日時：2016年2月10日 0時
