365+1の約束(3) ページ8
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「おわっ…ちょ、なんで泣くんだよ…!」
「だって…、だって…!」
自分でもびっくりするくらい、次から次へと溢れてくる涙を、左手で懸命に拭う。
でもしょうがないじゃん、嬉しかったんだから。
いくらなんでも唐突すぎるとか、ムード作り下手すぎじゃないのとか、言いたいことは色々あるけど、そんなことは結局どうでもいいんだ。
人一倍照れ屋な北山が、その気持ちを言葉にして伝えてくれたことが、ただただ嬉しかったんだ。
「ったく、しょうがねぇな…」
バカみたいに泣きじゃくる俺の目尻に、右から伸びてきた温かい指先が触れる。
そんな逆効果の優しさに、もっと涙が出た。
「きたやま…それ余計泣くからやめて…」
「なっ…人がせっかく涙拭いてやろうと思ったのに!もういいっ」
「あっ、北山……ぅわっぷ!」
ベッドから抜け出してしまった温もりを追いかけようと慌てて体を起こすと、突然顔に降ってきた何かに無理やり押し戻される。
これは……ティッシュ?
「…こんなにいっぱいいらないのに」
「いいから、それで涙拭いて鼻かめよ。鼻水たれてんぞ」
「うそ!」
押し付けられたぐしゃぐしゃのティッシュで、慌てて顔中を拭きまくる。
涙はいいけど、鼻水は見ないで!
そんな俺の様子に声を出して笑った北山は、まるで何事もなかったかのように、するりと右隣の空間に潜り込んできた。
俺の右腕を自分でセットし直して、もぞもぞと位置を微調整して満足そうな顔をする北山が、どうしようもなく愛おしい。
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時