面影さがしの行く末は(2) ページ49
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「コイツの目ってさぁ…なんとなく俺に似てると思わねぇ?」
「え…」
まるで挑発するみたいに呟いて、ミツは極上の流し目を俺に寄越してきた。
その顔はどこか勝ち誇ったようにも見えて、「お前は俺に似た男を無意識に目で追ってたんだぞ」とでも言いたげに、俺を煽ってくる。
「んふふ、無意識って怖いね〜?」
「……!」
…悔しい。悔しいんだけど、本当に無意識だったから何も言い返せない。
名前も知らない俳優にミツを重ねて、食い入るように見ていたなんて…しかもそれをミツ本人に指摘されるまで気付かなかったなんて、恥ずかしすぎる…!
俺が狼狽えて言葉を失う様子を見て満足したのか、ミツはもうテレビへの興味を失ったみたいで、「風呂行ってくる〜」と言い残して上機嫌でリビングを出て行った。
「…はっず…!」
パタン、とドアが閉まる音が聞こえたと同時に、思わず両手で顔を覆った。
ドラマのエンディングなんかもう頭に入ってこない。ていうか、もうこのドラマは二度と見れない。
自分でも気付かないうちにミツと重ねてた男の恋愛ドラマなんて、一体どんな顔して見ればいいんだよ。
「無意識マジこえーわ…」
しばらくはこのネタでからかわれるのは確実だな、とげんなりしながらリモコンをテレビに向けると、タイミングがいいのか悪いのか、ちょうど次回予告が流れ始める。
アップで映し出された若手俳優の目元には、言われてみれば確かにミツに似た面影。
だけどやっぱり、
「…ミツのほうが可愛いわ」
結局はそんな当たり前の結論に行き着いた二階堂であった。
…なんてね。
ミツが風呂から戻ったら、さっきは言えなかったその言葉を、今度は俺が得意げに言ってやろう。
それから下手くそな流し目を送ったら、ドラマよりも熱いキスをお見舞いしてやるんだ。
fin.
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時