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Gravity(4) ページ44

F side




シャツの胸ポケットに突っ込んだ細身のペンケースの存在を何度も確かめながら、通い慣れた道を走る。

あの日以来、もう二度と会うことはないかもしれない奴の忘れ物を毎日持ち歩いているなんて、親友に知られたら笑われるかもな。



それでも、いつか、もしかしたら――

もう一度、あいつに会えたら――



心のどこかでそんな期待を抱いている自分に一番驚いているのは、俺自身だった。


















「太輔おはよう!」

「おー、おはよう」



新学期初日の賑やかな教室に入ると、去年も同じクラスだった女子が俺を見るなり腕に絡みついてきた。

俺に好意を持っているのは丸わかりだけど、それに応える気は今のところ全くない。



「あたし達また一緒だよ!二年も同じクラスになれるなんて、なんか運命感じない?」

「別に一緒なのはお前だけじゃねーだろ?あ、ねぇわた、俺の席どこ?」

「もうっ、太輔ってば!」

「太輔はここ。俺の前」

「俺の後ろわたなの?やった!」



運命を語り始めたそいつを適当にあしらって親友のもとへ逃げると、席が前後だと教えられて一気にテンションが上がった。このままずっと席替えしなきゃいいのにな。



しばらくして騒がしい教室に担任が入ってきて、散り散りになっていたクラスメイト達も一旦おとなしく席につく。

俺もそれにならって、体ごとわたに向けていた顔を正面に戻そうとした時…


俺の目は、隣の席に釘付けになった。




「…あ……!」




忘れもしない、あの横顔。

初対面の俺に暴言を吐いて去っていったあいつが今、俺の隣にいる。



胸ポケットの中のペンケースが、ドクンと熱を持った気がした。




.

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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時

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