ある嘘つきの話(2) ページ24
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「…なー、北山」
『ん？どした？』
「俺、今日誕生日やんか」
『知ってるわ！だからこうやって電話して…』
「…おめでとうって、言うてや」
『え…』
この胸の苦しさは、歳のせいなんかやあらへん。
全部全部、俺の心ん中に図々しく居座る、お前のせいや。
お前には、31にもなるおっさんにこんな切ない想いさしてる落とし前、ちゃんとつけてもらわなあかんよな。
……せやから。
「俺の顔見て、おめでとうって言うてや。北山」
『…大倉、』
「ありがとうはそれからやな〜」
『…ハァ…。ほんっとにお前は、とことん素直じゃねーな！』
“ ビール用意して待ってろよ！ ”
そう言って笑いながら電話を切ったあいつの顔が、俺にはいとも簡単に想像できる。
それから、何やかんや言いながら自分でビールとつまみをどっさり買うてきたあいつは、俺の顔見て開口一番こう言うんや。
“ お前はほんとに俺のこと好きだよな！ ”
「…せやで。俺、お前のことめっちゃ好きやねん」
俺がどんな顔して、どんな声でこんなこと言うてんのか、お前はきっと想像もしてへんやろうけど。
それでもええねん。
お子様なお前には、こんな大人の苦い恋はまだ早い。
お前はなーんも知らんと、肉食ってビール飲んで、バカみたいにわろてくれてたら、それだけでええねん。
そしたら俺も、頑張って友達のフリするから。
友達の顔して言う「好き」くらいは、許してくれるやろ？
素直になってお前を失うくらいなら、俺は一生、嘘つきなお前の「親友」でいい。
fin.
まねっこたいちゃん＊ドリル編▽藤北→←ある嘘つきの話▽倉→北
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作者名：いちはら
| 作成日時：2016年2月10日 0時
