交わす熱 いざなう君の みだれ髪(2) ページ20
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俺がどう出るのかを楽しんでいる二人を軽く睨みつけていると、諦めの悪いミツが「良いこと思いついた!」と言いながら腕に縋り付いてきた。
ミツにとっての良いことは、つまり俺にとっての悪いことなんだけど…。
「横尾さん、俺が上手に俳句作れたらキスしてくれる?」
「……はい?」
「お題はキスね!横尾さんが査定して!」
「え、ちょっと、」
言うが早いか、ミツは俺から没収した本を適当にめくりながら、うんうんと唸り始めた。
どう見てもちゃんと読んでいるようには見えないけど、たかがキス一つでここまで必死になるその姿が、何だか妙にいじらしくなってくる。
双子の策にハマるのは癪な気もするけど…一回くらいなら、してあげてもいいかな。
その一回で満足してくれるとは、到底思えないけどね。
「っしゃ、できた!!」
「え、もう?」
「うん!色々考えたけど、これしか浮かばなかったからさー」
結局指先で弄ばれただけのかわいそうな本を閉じて、ミツはにっこりと笑いながら俺を見上げた。
きゅるんとしたその眼差しに、あ、今キスしたいかも、なんてあまりにも勝手なことを考える。
「それでは、発表します!」
「…どうぞ。」
「『キスしたら その先もっと 欲しくなる』」
「……………」
「ど…どうかな!?」
キラッキラの期待に満ちた目で、まるで本当の順位発表みたいに手を合わせて俺を見つめてくる、ミスター凡人。
一回じゃ足りない、一回したらその先が欲しいっていう、想像通りの欲望丸出しな句を披露されて、ミツの素直すぎる感情表現に思わず苦笑いがこぼれた。
ここに先生がいなくてほんとに良かったよ。
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時