憎い立ち位置(2) ページ16
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「藤ヶ谷ゾーンとか言って茶化すの、結構キツいんだからな…キングのばーか」
俺が「マイコ」と向き合うたびに、ときめかせないといけないはずの相手に醜い嫉妬心を燃やしてること、藤ヶ谷は知らないだろうな。
だってお前は、女心を踊らせるのが得意で、俺の心を沈ませるのはもっと得意な、酷い男だから。
クイーンを喜ばせることに夢中なキングは、哀れなジョーカーの願いになんて、気付いてはくれないんだ。
「…親友役じゃなくて、マイコ役をやれる企画があればいいのに」
もしも本当にそんな日が来たら、幸せすぎてどうにかなっちゃうかもしれないけどな。
俺さ、藤ヶ谷がよくやる癖とか言い回しとか、全部把握してるんだよ。
告白する時は敬語になりがちだとか、「すごく」「大切」って言葉をよく使うとか、キスは一回寸止めするとか、
そういうの、全部全部見てきたから。
だからきっと、お前が今まで口説いてきたどの「マイコ」よりも、俺が一番お前のVTRを魅了的にできる自信あるよ。
芝居なんかしなくても、絶対にいい画が撮れるに決まってる。
だって俺は
藤ヶ谷のことがすごく……
大好きです。
「…なーんて。言えるわけねーよな、こんなこと」
背伸びしたって、ひっくり返ったって「マイコ」にはなれない俺は、また次の収録でもキングのVTRを眺めるだけ。
そしていつものように、右上の小さな窓から、キングに熱視線を送ってるんだろう。
歴代のマイコなんかより、俺のほうがずっとずっと、藤ヶ谷のことが好きなのに。
「…ほんっと憎いわ、マイコ」
fin.
WATARU ver. 30.5.16▽横北→←憎い立ち位置▽藤←北
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時