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右手の人差し指を上げるとその上に一つの球体が現れた。肌で感じるそのぴりつきは、第六感というやつだろう。
「”収束”、”発散”、この虚空に触れたらどうなると思う?」
「術式反転 赫 」
閃光が眼前に広がった。気が付いたら道路からはじき出され山林をなぎ倒している。地面に直撃し弾んだすぐ脇を併走する五条の姿が見えた。視認し飛び上がり手のひらから炎を放射する、が。
「びゃあ!!」
そこに五条の姿はなく、自らの後ろに気配を感じて。バキィと音を立てて空中で蹴り飛ばされた。その先は。
「あっ、ちょうどいいか」
山林の中に隔てられた湖。水柱を上げて沈み込む。流血し、満身創痍の呪霊に冷たい水が降りかかった。ファミレスで黒ずくめの男に獄門彊を渡す代わりに五条悟を殺すと謳った時。
___「獄門彊を儂にくれ!!蒐集に加える」
___「その代わり」
___「五条悟は、儂が殺す」
___「別にいいが、死ぬぞ。漏瑚」
口元に笑みを携えそう言い切った。その時はそんなこと、と信じていなかったが。
「ククク」
「(眉唾ではなかったな。だが、当たらぬなら領域に引きずりこむまで)」
「……?」
「(どこへ行った?)」
立ち上がり周囲を見渡すが五条の影も形もない。さては逃げたか、などと思考がよぎるが軽い謝罪と共に現れた。
「ごめんごめん」
「待った?」
「どこ!?ねぇ、ここどこ!?」
ピンク色の髪に頬の傷跡が目立つ少年を連れて。その少年を漏瑚は知っていた。あまりにもこの界隈では有名だ。
「!!ソイツは」
「(宿儺の器…!!)」
「見学の虎杖悠仁君です」
「富士山!!頭、富士山!!」
初対面の相手には失礼だぞ。いくら呪霊といっても、いくら日本最高峰の火山を連想してしまうとしても。せめて心の内に留めておけ。
高専内、地下室。続く階段を五条は降りていた。室内に足を踏み入れると暗闇に映画が流れ呪骸を抱えて鑑賞する虎杖が見える。
「サーム!!サァーム!!」
「どこだ…サァーム!!」
見入っているが呪骸は鼻提灯を膨らませて穏やかに眠っていた。五条と夏油が出発してから数時間。
「(へぇ、意外と…飲み込みが早い)」
「悠仁」
「五条先生!?」
唐突に現れ急に呼びかけても呪骸が目を覚ますことはなかった。
「用事は!?」
「(早めに出力上げて、さっさと次の段階に進めそうだね)」
「?」
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2021年11月4日 16時