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二人の背後では釘崎がまたもやパンダに投げられている。それを受け止めようとする狗巻。どうやら受け身の練習のようだ。


「交流会まで一月半。ボサボサしてんなよ」

「次、オマエも長いのためしてみろ」


真希が持っていた長物を投げ渡す。こっちは呪具の練習らしい。触れてみた感触は。


「…意外としっくりきますね」







地下室。夏油が口を開く。


「皆、わずかな感情の火種から呪力を捻出する訓練をしているんだ」

「逆に大きく感情が振れた際に呪力を無駄遣いしない様にもね」


五条が後を引き取る。


「訓練方法はいくつかあるけど、悠仁にはかなりしんどいのをやってもらうよ」

「ど…、どんな?」


思わず喉を鳴らして質問。


「「映画鑑賞!!」」

「映画…鑑賞??」


二人共レンタルビデオを持って笑顔で告げる。映画鑑賞は、読んで字のごとく映画を鑑賞するものだ。それで訓練になるのだろうか。頭の中を?マークが埋め尽くす。


「そう。名作からC級ホラー、地雷のフランス映画まで。起きている間は続けざまにだよ」

「??」

「勿論。ただ観るだけじゃないよ」

「コイツと一緒に観るんだ」


五条が掲げたものは、眠っているグローブが付いたクマの人形。手渡され虎杖が疑問を零す。







「何このキモカワイイ人形」

「カワイイか?」

「キモカワイイ……、美々子と菜々子が何か言ってたね」


女子高生に刺さるものだろう。たぶん。そして、お気付きだろうか。十何年前Aと暮杷に父親経由で渡された珍妙な顔をしたクマの人形。そう、呪力操作の練習に。この人形の前段階が、渡された人形である。


「学長特製の呪骸だよ」

「あー!!やっぱりか!!趣味が同じ」

「……で?全然、要領得ないんだけど」

「焦らない焦らない。そろそろじゃないかな」


カッと目を見開いた呪骸が虎杖の顎に先制パンチ。クリーンヒット!!一発KO。この勝負は呪骸の勝利となりました。どうですか、解説の山田太郎さん。痺れましたねー。閑話休題。


「その呪骸は一定の呪力を流し続けないと目を覚まして今みたいに襲ってくるんだよ」

「さっきも言った通り、ここには色んな映画が揃ってるから。ドキドキハラハラワックワック、泣けて笑えて胸クソ悪くなれる」

「まずはその呪骸起こさず映画を無傷で一本、観通すこと」

「これがどんな感情下でも一定の呪力出力を保つ訓練。多すぎても少な過ぎてもいけないよ」

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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2021年11月4日 16時

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