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第28話 強さを追い求めた先に何があるのか ページ19

よく晴れた休日の午前中。映画を見に行こうと待ち合わせしていた。待っていると翡翠が到着したようだ。


「ごめん、待たせたね」

『大丈夫だよ。あれ、スカーレットは?』

「仕事だって。締め切り一週間前らしくて」

『あー。なるほどね』


そう、仕事。スカーレットは売れっ子小説家である。ジャンルはノンフィクション。術式生命体だが、そんなこと関係ないわと言って執筆した小説を応募したら見事最優秀賞をとった。そこから彼女の小説家人生は始まった。何時ぞやのヘムスカートも自分で稼いだお金で買ったのだ。

もう一度言う。スカーレットは売れっ子小説家である。要するに、自宅で缶詰になっているということだ。


『じゃあ行くか。帰りに映画館でお土産買おう、スカーレットも見たいって言ってたからね』

「そうだね。あぁ、そのスカート。前買ったやつでしょ。似合ってるよ」

『よくぞ気付いた』


なんて言いながら、映画館までの道を二人で歩いた。







『面白かったね。それぞれのキャラクターの個性も良く引き立ってた』

「うん。ずっと傍で見てきた男の子が感情を伝える所が音楽も綺麗で見入っちゃったよ」


近くの穴場の喫茶店でお昼ご飯。この喫茶店はオムライスが絶品だ。ここで待ってる間に先程見た映画の話で盛り上がる。負けず嫌いな男の子、その男子に恋する内気な女の子、女の子と幼馴染みの眼鏡の男の子。三人が同じ写真部に入ってたまたま見つけた一枚の古い写真の謎を追い求める。恋も推理も入り混じる青春映画だ。

そこで幼馴染みの眼鏡の男の子が女の子に告白するシーンがあった。


__「ずっと見てきた。君の初恋も、幼馴染みとして。でもさ、もう見ているだけは……嫌なんだ」

__「君の隣で、君の笑顔を、守る権利を僕に下さい」


「ねぇ、A。僕はさ、非術師であることに後悔はしていないよ」

「スカーレットを守る為にもこの選択が正しかったと思ってる」

「けどさ、君が戦っているのを見ているだけなのは、ちょっといやだな」


少し寂しそうな顔でその翡翠色を伏せて、そう言った。


『なんだっていいよ』

『それでお前が救われるなら、それでお前が笑えるなら』

『それで、お前が泣かないのなら』

『なんだっていいよ。なんだって』


呪術師になろうとも、何を選ぼうとも、そこにお前の幸せがあるならば。その名前を冠した翡翠を揺らめかせるのを見て。ほら、やっぱり泣くじゃないかと口元を緩めた。

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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2021年11月4日 16時

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