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高専内、一室。虎杖が蘇ったことに驚愕を隠せない伊地知が、重要なことを思い出した。
「あ、あの、葬儀屋の方がいらっしゃっているのですが……」
「葬儀屋！？俺、葬儀されんの！？」
「あー、そうだったな」
家入が一言零す。虎杖の解剖後、調査が済めばその遺体を火葬する予定だった。器として扱われた虎杖を、せめて人として送らせてやりたいという五条と夏油の意向だったのだ。ホルマリン漬けにされて全てを研究材料にされるなんて認めない。火葬して骨になって祖父と同じ墓に入る、そんな一人の人間の最期を。
「悠仁は戻ってきたからね。葬儀をする必要はないよ」
「伊地知ー、葬儀屋は今別室で待機してんの？」
「は、はい。来客用の応接室でお待ちいただいています」
「そう。じゃあ、そのまま少し待ってもらって」
なんでですか、そんな疑問が喉まで出かかったが口をつぐんだ。五条なりの考えがあるのだろう。下手に聞けば、藪蛇になるのは想像に容易い。知らない方が幸せだ。
「分かりました」
高専内。解剖室を出て五条と夏油、家入が廊下を歩いていた。
「あー、報告。修正しないとね」
「「いや、このままでいい」」
虎杖の死亡報告を修正しなければと家入が言うがそれを止める五条と夏油。その理由は。
「また狙われる前に悠仁に最低限の力をつける時間が欲しいんだ。記録上、悠仁は死んだままにしてくれないかな」
「んー？じゃあ虎杖、がっつり匿う感じ？」
「いや、交流会までに復学させる」
「何故？」
「簡単な理由さ」
「「若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ、何人たりともね」」
声を揃えて異口同音に告げる。その信条は、自身の学生時代にあった青春が何よりも楽しくかけがえのないものだったから。
「じゃあ、葬儀屋はどうするんだ。他の遺体を替え玉にでもするのか？」
冗談で言った言葉に笑顔で返す。思わず顔が引きつって。
「……マジか」
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作者名：ボーダーライン | 作成日時：2021年11月4日 16時
