【呪術廻戦】 これは、君を待つまでの物語

第63話　僕ら継ぎ接ぎなものだから ページ37

今月の始まりました、「呪力研究同好会」。別名同期会。開催地は私の家。今月の議題は「呪力の起源」、呪力同好研究会と銘打っていればその核心に迫らなければならない。囲む机に並べられた関連資料を元に多角的な視点で追求していきましょう。翡翠がこの先の議論の道筋を確かめる。


「呪力とは、相手を呪う力そのもの。負の感情を源に発生する。呪力のない人間は呪霊を見ることも触れることもできない。呪力の有無は大体生まれつきで後天的に得ることは殆ど無いと言っていい」

「呪力はエネルギー、人類史の中で自然と生まれることは有り得ない。物理学では物体を動かす働きに必要なのがエネルギーだからね。では一体なんの為に、何が要因で生まれたのか」


術式の起源を討論した時に人間が術式を備えているのは、呪力の多い人間を食らって強くなる為に呪霊が人を襲うようになったから危機感が芽生えたと仮説が立った。その線でいくと術式の前に呪霊が生まれている。負の感情が具現し意思を持った異形。呪力の塊である呪霊と呪力の起源は密接に関係しているだろう。

呪霊の起源は呪術全盛が平安、平安から江戸にかけて多くの妖怪絵巻が確認されて天元様が生まれた奈良時代まで及ぶことから妖怪のお伽話が要因だったのではと嘗て考えた。負の感情を覚えるにたる事象があった故に呪霊が生まれたと。神話に纏わる資料を指さして口を開く。







『日本最古の呪いと呼ばれるのは、愛する夫の仕打ちに悲しんだイザナミが「このような酷いことをするなら、私は一日に千人の人間を殺しましょう」という言葉だよ』

『数千年昔から人々は敵対する者の不幸を願い、神や悪魔に頼ってきた。天与呪縛しかり、人間にはどうにもできない存在がいたとしても不思議じゃない。イザナミのように神様が呪力というエネルギーを作り出したなら？』

「その場合、疑問があるわ。第一に呪霊が人を害するから人間が絶滅する可能性がある。祖であるアダムとイブを生み出したのは神でしょう。環境を侵害する人間を滅ぼしたいなら遠回りすぎるわね。圧倒的な権限を行使すればいい」

「人間の原初の呪いは”報復”よ。受けた仇を返す、霊長類の頃だって狩りで集団生活を送っているなら争いが起こり報復を行うことだってあり得る。その時負の感情を覚えても呪力が生まれていると思う？」

「その瞬間呪力が生まれているならとっくに呪霊に殺され進化は起こらない。ならば言葉を得たホモサピエンスよりも後自然環境の災いを避けようとした縄文時代に突発的に呪力が出現した」

「＿＿＿畏怖よ。どうしようもない存在への危機感。その瞬間に呪力が生まれたじゃないかしら」

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