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気絶や死亡しているのではなく、ただ単純に疲れて眠っていただけだと知った虎杖と釘崎はお互いの両手をハイタッチしながら喜びを分かち合う。生きているなら良かった。同級生を弔うのは覚悟はあれどしたくはない。そして、如何に特級呪霊と死闘を繰り広げたとて、吉野が傍にいたとて平常時なら同期の中で誰よりも高い警戒心を持っているのに危険極まりない行為をしていた伏黒に思わず釘崎は苦言を呈した。
「宿儺の指持って寝こけるなよ。危ねぇなぁ」
「本当にそう。もっと言ってやって。僕がいなかったら呪霊にやられて死んでたよ伏黒君」
「あれ、じゃあなんで順平”澱月”出したままにしてんの?傷治ってんだろ?」
「伏黒君が掴んで離してくれないから……!!」
「……………悪ぃ」
しかめっ面にしていた表情を耐えきれずにくしゃっと歪めて叫んだ吉野の言葉に自分の手元を見やった伏黒は、宿儺の指を持っていない左手で自身を包んでいる”澱月”の柔いゼリーのような身体を軽く握っているのを確認して気まずそうに手を離す。実際、めちゃくちゃ快適だったからいくら呪霊がやって来て吉野が迎撃しようとも戦闘音にも呪いの気配にも気付かず爆睡していたのだ。
”澱月”を解けば呪力の消費は抑えられるが即ち物理無効化を失うことになって、眠る無防備な伏黒を標的にされてしまえば庇い続けるのは難しい。だから釘崎と虎杖の治癒の分を残す為に最小限の呪力出力で必死に戦う吉野の横で穏やかに安眠する伏黒を苦渋の思いを抱えて守り通したのである。今回のMVPは誰あろうと吉野だ。本当によく頑張った。
ようやく吉野が”澱月”を消滅させ、地に座った伏黒はこれ以上追求されると分が悪いのなんのとばつが悪く、別の話題を口にして話を逸らす。
「なんで指のこと知ってんだよ」
「それ聞く余裕ある?」
「ねぇ」
「僕もちょっとないかな」
「とりあえず新田さんに連絡して、応急で封印して貰わねぇと呪霊が寄る」
もう寄った後だけどね、と呟く吉野の言葉は聞こえない振り。だが、封印を優先するのはごもっともで釘崎も吉野も頷きを返す。4人全員満身創痍。呪力も体力の残りも万全ではない。際限なく襲い来る呪いを全て向かい打つのは厳しいだろう。何も言わず祓いに向かった監督する立場の新田に連絡するのは少々気が重いが仕方ない。
そんな中で、一人だけ自分を指さして他の方法を提案した者がいた。
「俺食べようか?」
「残飯じゃねーんだよ」
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ボーダーライン(プロフ) - セツさん» わぁ、初コメ有難うございます!そんな、全然失礼なんかじゃないです。嬉しいです!コメントがやる気に繋がります。続編のプロローグは黒影にスポット当てようと思ってるのでご注目宜しければ。コイツの”叫ぶ”を書いた時は感情移入して泣きました。続き頑張ります! (6月12日 22時) (レス) @page50 id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 初コメ失礼します。続編おめでとうございます!続き楽しみにしているので、頑張ってください! (6月12日 21時) (レス) id: a9c1286aea (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - そらさん» コメント有難うございます。2ヶ月近く更新してないので大分お待たせしてしまってすみません!完結まで構想練っているのであとは気力次第。ぼちぼちやりますかぁ!(逃げ道を絶つ)紆余曲折あると思いますがこの大長編にお付合い下さい。これでもまだ中盤なの(小声) (2023年3月27日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2023年3月27日 0時) (レス) @page2 id: b809f0b9bc (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!焦ったぁー!!気付かせてくれて本当に感謝! (2023年1月1日 14時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2023年1月1日 14時