【呪術廻戦】 これは、君を失うまでの物語

第52話　アガペーの失墜 ページ21

今月もやって来ました。「呪力研究同好会」略称、同期会のお時間です。今回の開催地は私の家。論文、関係資料などはお手持ちのものを各自ご参照下さい。議題は「呪霊が生まれる負の感情の基準について」。より良き議論になるよう疑問点があれば躊躇なく発言を行いましょう。

幾つかの紙や珈琲が入ったマグカップで覆われた机を囲んで、翡翠とスカーレットと顔を合わせる。トップバッターを務めたのは私。心の働きが書かれた論文を指さし議題の方針を提示する。


『人の心は複雑だ。一つの行動でも様々な感情が揺れ動く。例えば、サプライズを受けてそのサプライズを事前に知っていたら、祝ってくれるのは嬉しいけれど新鮮な驚きはないと何も知らないままでいたかったと少し残念に思うよね』

『そんな時、嬉しいという正の感情と後悔の負の感情が同時に存在していることになる。じゃあ、その時負の感情は呪力となって呪霊が発生するかな』

「そうね、比率も関連するんじゃないかしら。どちらか一方が片方の感情より大きかった場合、大きい方に埋め尽くされる。負の感情の方が多いなら呪霊が生まれるには足るでしょう」

「以前、呪霊を殲滅させる方法で上がった正の感情が生まれやすい遊園地の活用があったでしょ。そしてその仮説の検証で遊園地に行って呪力の流れ、呪霊の有無、負の感情の変化について調べた結果がこの議題にも関わると思うから、資料見ようか」







人数分プリントした資料はグラフなど生み出される負の感情＝呪力量の差が数値的に示されている。六眼もなしにこんなことが分かるのは、他でもないこの私が呪力操作の延長で呪力探知に特化した技術を確立させたからに他ならない。まぁその説明は今関係ないので割愛。

まず、遊園地に入場する際の負の感情はとても少ないことが分かる。どんな遊具に乗るか、どんな物を食べるか、どんなキャラクターに会うか、ドキドキワクワク期待に胸を膨らませて多幸感で一杯になる。流石夢の国と言った所だ。

遊園地に入った後、内部の状況。そこには笑顔が溢れていた。驚くことに負の感情が微塵も湧かないのだ。楽しい、嬉しい、ポジティブな気持ちは負の感情を見せる気配すらない。一点、お化け屋敷など恐怖体験は負の感情の分泌量が多い。ただ、記憶が残りやすい一番最後に行くのではなく他のアトラクションや土産選びを挟めばすぐさま正の感情で覆い尽くされる。遊園地から出る人の顔は誰もが明るかった。負の感情は少なく呪霊が発生する要因が限りなく低いのだ。この検証を元にすると。


「正の感情は負の感情を打ち消す。正の感情が負の感情より比率が多い場合呪霊は生まれないということだね」

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