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呪霊側の勧誘に応じなければ自由は手に入るけれど、一般社会に適応できるかはまた別の話。人間と遜色ない長兄と次男、壊相はともかく三男、血塗はどれ程兄の弟補正が働こうとも異形にしか見えない。着ぐるみを着るなど覆い尽くせば何とか紛れ込めるかもしれないが日常生活をそれで過ごすのは流石に無理がある。
出した結論に反対の声は上がらなかった。三人で一つ、その言葉を壊相は術式を食らい王手をかけた呪術師たちの前で思い返す。三人でいる為に、三人で生きていく為に必要な犠牲だ。
「(兄弟の為、兄弟が望むのであれば私はそれに殉ずるのみ)」
「辛いようでしたら今すぐ殺して差し上げましょうか?」
「クックックッ」
手を掲げて紳士的に温情をかけた壊相の耳に釘崎の笑い声が聞こえた。毒はもう体内に入り、分解は激痛と共に進行していく、完全に勝敗は決まったと誰もが思うだろう。それなのに笑うなんて死を前にして気でも狂ったか。そんな思考が頭を過り思わず懐疑的な表情が浮かぶ。
だが、勝敗は決まったなんて欠片も思っていない者がここにはいた。
辛いなら殺してやろうか、だと?笑わせるな。10代から呪術師になる決意をして高専に入って鍛錬で限界まで己を研磨して、日夜命をかけて呪霊と戦ってるんだ。死にたくはない、生きたいのは当たり前。けれど、任務で死ぬ覚悟はいつだってしてる。だからこそ毎日好きなように生きて生を謳歌している。
だが、だがなぁ、死ぬ覚悟はあるが敵に乞うて死ぬつもりなんて一切ない。最後まで自分の持てる全てをぶつけて足掻ききって呪って死んでやる。それが呪術師だろう。そんなことも分からずに情けをかける壊相に笑いがこみ上げて仕方ない。
「当たれば勝ちの術式、強いなオマエら。でも残念。私との相性、最悪だよ!!」
「___芻霊呪法 ”共鳴り”!!」
腰に下げた鞄から後ろ手に取った釘に呪力を込めて、薔薇の紋様が浮かぶ手首に勢いよく突き刺す。瞬間、壊相と血塗の体内に痛烈な痛みが走った。どこも負傷は負われていない。貫いたのは釘崎の腕だけ。それでも感じる苦しみは本物で。突如起こった苦痛に一瞬呼吸が止まり痛覚が発する刺激に喘ぐ彼らに釘崎は挑発的に笑いかけた。
「我慢比べしよっか♡」
全身全霊で、呪ってやる。
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ボーダーライン(プロフ) - セツさん» わぁ、初コメ有難うございます!そんな、全然失礼なんかじゃないです。嬉しいです!コメントがやる気に繋がります。続編のプロローグは黒影にスポット当てようと思ってるのでご注目宜しければ。コイツの”叫ぶ”を書いた時は感情移入して泣きました。続き頑張ります! (6月12日 22時) (レス) @page50 id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 初コメ失礼します。続編おめでとうございます!続き楽しみにしているので、頑張ってください! (6月12日 21時) (レス) id: a9c1286aea (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - そらさん» コメント有難うございます。2ヶ月近く更新してないので大分お待たせしてしまってすみません!完結まで構想練っているのであとは気力次第。ぼちぼちやりますかぁ!(逃げ道を絶つ)紆余曲折あると思いますがこの大長編にお付合い下さい。これでもまだ中盤なの(小声) (2023年3月27日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2023年3月27日 0時) (レス) @page2 id: b809f0b9bc (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!焦ったぁー!!気付かせてくれて本当に感謝! (2023年1月1日 14時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2023年1月1日 14時