第50話 毒を食らう覚悟はとうに ページ2
久々の休みが取れたので翡翠の家に赴く。残念ながら翡翠は仕事だったので執筆の気晴らしに一人でまったり過ごしているスカーレットが出迎えてくれた。今日のスカーレットは翡翠をトレースした男性スタイル。白シャツに黒のスキニーといったシンプルな服装だがそれ故に金糸の髪と赤い眼がよく映える。勝手知ったる所作で紅茶を煎れて優雅なティータイム。
『一応連絡入れて来たけど、一人で過ごしたかったとか何か用事あったりしたかな』
「そんなものないわよ。あってもAが来るならキャンセルしてるわ。貴方との時間に勝るものなどないもの」
わぁ、なんて殺し文句。反応を楽しむように口角を上げたスカーレットの瞳には揶揄いが浮かんでいた。友人への気遣いを必要ないと一蹴された私はそれもそうだと吐息を零して笑みを返す。
さて、特に予定はお互いないとして折角の二人きりの一時。ダラダラ時間を潰すのも勿体ない。ティータイムなのだからお喋りにでも興じようか。以前仕事でスカーレットに迎えに来て貰った時を思い出して話の遡上に乗せる。あの後のディナーでウエイターの反応が記憶に残っていた。
『そういえばスカーレットが
「あぁ、そうね。この口調は自我を確立した時に数ある口調データの中から一番私に適していたものを選んだのよ。私の個性を表す一つだからこれがスカーレットという存在だと理解するしかないかしら。…でも、その印象を持ってしても美しいでしょう?」
『うん。つまり根っからの女王様気質って訳だ』
納得。実際応対していた女性は驚いていながらも頬を赤らめていた。それも魅力の一つということ。自身の美貌を知っていて挑発的に視線を向けるスカーレットは友人の贔屓目なしに顔が良い。うーん100点。優勝です。小説の近況に話題が進み、人間の性質を知るには本を読むと良いと実体験を教えてくれたスカーレットに一番心に残った本を聞いてみた。
「喜びや悲しみ、数多の感情を映したものは興味深いわ。フランダースの犬は良かったかしら」
『あー、ハッピーエンドで終わらないやつ。手の平返してネロを追い立てる村人は確かに人間らしいよね。特にネロの最期の言葉が心を抉る』
「えぇ、”パトラッシュ、私の為に死になさい”」
『そんなネロ嫌だよ』
お前は何を見たんだ。
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ボーダーライン(プロフ) - セツさん» わぁ、初コメ有難うございます!そんな、全然失礼なんかじゃないです。嬉しいです!コメントがやる気に繋がります。続編のプロローグは黒影にスポット当てようと思ってるのでご注目宜しければ。コイツの”叫ぶ”を書いた時は感情移入して泣きました。続き頑張ります! (6月12日 22時) (レス) @page50 id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 初コメ失礼します。続編おめでとうございます!続き楽しみにしているので、頑張ってください! (6月12日 21時) (レス) id: a9c1286aea (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - そらさん» コメント有難うございます。2ヶ月近く更新してないので大分お待たせしてしまってすみません!完結まで構想練っているのであとは気力次第。ぼちぼちやりますかぁ!(逃げ道を絶つ)紆余曲折あると思いますがこの大長編にお付合い下さい。これでもまだ中盤なの(小声) (2023年3月27日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2023年3月27日 0時) (レス) @page2 id: b809f0b9bc (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!焦ったぁー!!気付かせてくれて本当に感謝! (2023年1月1日 14時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2023年1月1日 14時