穏やかを失って、泣いた ページ28
.
「……おい、佐久間？」
「フンだ！なんだよ照のやつ！ふっかもどういう教育してるんだよ！なんで友だちの電話途中で切るんだよ！」
「……照も忙しいやつだし」
「…うるせぇ…うるせぇ…やっぱり俺は要らないんだろ…」
『佐久間さん？佐久間さん？』
「……ッ、ねえ、A…いっそ一緒に逝っちゃおっか…？きっと楽になるよ、俺知ってるもん…」
『っ、待っ、佐久、ま、さ』
スイッチの入った佐久間さんにいきなり押し倒されて大きくてゴツゴツとした両手がしっかりと首に回る。
ゆっくりゆっくりと力が入っていって息をするのさえ苦しくなる
……どうしてこんなときに、自分を苦しめている人の笑った顔がいっぱい浮かんでくるんだろ、
視界が涙で滲んでいく
「……こんのアホ！」
「イタっ！」
『ゴホッ、ゴホッ…ケホッ……はァ、はぁ、』
深澤さんの握った拳が佐久間さんの脳天を捕える
頭を押さえて蹲る佐久間さんの横に転がる私
この場面から見れば深澤さんに殺られた私たちに映るだろう
「佐久間…大事な奴は命掛けて護るもんなんだよ。自分の手で終わらす奴は、……自分だけにしろ」
「……ああ、俺またやっちゃった…？……ハハっ、俺サイテーじゃん……」
「……ん、さっき貰ったクスリ。飲んどけ。」
「……ごめん…ごめんなさい…」
横たわる私に対してなのか、深澤さんに対してなのか、佐久間さんの声は震えていた
バタンと扉が閉まった音が聞こえて暫くして視界に深澤さんが入ってきた
「梓川A。……いつまで寝てんだ」
『……う、うう…』
「………悪ぃ。怖い思いさせたな、ごめん、」
『……っ、』
深澤さんの手が視界を奪ってくれたおかげで泣き顔は見られなくて済みそうだ、
怖かった、苦しかった、……のは佐久間さんも一緒なのに
佐久間さんは出ていって、私だけが慰められてる
……深入りしすぎた、この人たちを知りすぎた、
『…深澤さん、』
「ん、」
『……佐久間さん、独りで泣いてないですかね、』
「……知らねぇよ、めんどくせぇ。」
『……佐久間さんのとこ行ってきます、』
起き上がって玄関まで向かう私に「照には今度詫び入れに行かせるから、ごめん」と言葉を放った
こんなに階段をあがる足が重く感じたのはここにきて初めて
202号のドアの前に立つ。
『…お邪魔しますよ？』
「……ぐすっ、ん、」
ほらね？ やっぱり…泣いてたじゃないですか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1972人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Emma(プロフ) - 星10じゃ足りない！評価ボタンってなんで連打出来ないの？と思うくらい素敵な作品でした…。完結､続編おめでとうございます。何度読んでも興味深く素敵な作品だと思います｡改めまして､ひとまず､お疲れ様でした｡ (2020年9月7日 11時) (
レス) id: fe7283b053 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまそ - 読んでいてすごく楽しかったです。どんどん続きが読みたくなって完結してしまった時は楽しみが一つ無くなってしまった、と寂しくなりました。また番外編や続編が読めたら嬉しいです。他の作品も更新楽しみにしております。 (2020年8月2日 8時) (レス) id: f5b8401e26 (このIDを非表示/違反報告)
ばやし - 読みやすく引き込まれる作品は久々でした。これからも繰り返し読ませていただきます。続編見れたらな、、、と密かに願っております。 (2020年7月6日 11時) (レス) id: e0a81c1a31 (このIDを非表示/違反報告)
べぺ(プロフ) - 読むのがちょー楽しかったです。また繰り返し読みたいと思います。完結おめでとうございます！お疲れ様でした。 (2020年6月1日 20時) (レス) id: fc36e1dc04 (このIDを非表示/違反報告)
aichon(プロフ) - 完結おめでとうございます！更新されるのを楽しみにして読んでました！読みやすく引き込まれる作品をありがとうございました！次作も楽しみしております (2020年6月1日 19時) (レス) id: 48be932e04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鶴
| 作成日時：2020年5月10日 17時
