✩ ページ16
荷物を半分奪われるようなかたちで持たれて、
空いた手で私の手を握って走り出す。
見た目は深くバケハを被ってマスク姿。
傍から見たら逆にこっちの方が怪しいけど、
声が明らかに……
？「ほら、急いで」
『う、うん！』
明らかにリノだった。
2人組が呆気に取られながら急に走り出す私たちになにか叫んでいたけど、振り返らず全力疾走した。
『……っリノ、も、しんどい』
暫く走り続けて、息が上がってしんどくなって呼びかける。
少しずつペースを落として急に足を止めた彼にぶつかってしまう。
lk「もうさすがに巻けたか」
『そぅ、だね……』
リノは軽く息切れはしているけど、私ほどしんどそうにはしていない。これが若さなのか。
ようやくこちら側を見てマスクを外して綺麗な顔が見えた。
lk「よく俺ってわかりましたね？」
『いや、聞き馴染みのある声だとおもって……』
姿は怪しさ抜群だけど。
でも、本当に救世主だった。
『でもホント……めちゃくちゃ助かったよ』
lk「たまたま近所で通りかかったからよかったけど、危なすぎ。Aさん」
『う、……そうだよね。気をつけないと』
lk「本当に思ってる？鈍いにもほどはあるけど、俺がいなかったら断れなくて連れ込まれてたんじゃないの？」
『そ、それは……そうだけど』
少し、怒ったような怖い表情で言う強い言葉に怯んでしまう。
ごもっともだし、多分リノは心配で強く言っているんだろうけど、色々考えてしまっている私には少し堪えてしまう。
『なんか、色々ついてなくて……だから……』
泣きたくなんかないのに、引いたはずだった涙で視界がぼやける。
ましてや年下の男の子の前で。
それでも安堵も相まって情けなくて涙が止まらない。
なんて情けない大人だろうか。
呆れてものも言えないであろうリノの姿は涙で見えない。
lk「……泣かせたい訳じゃないんだよ」
ぼそっと聞こえて、腕を急に引かれた。
突然なことに驚いて一瞬何が起こったのか分からなかったけど、すっぽりリノの腕の中に納まっていた。
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作者名：mrn710 | 作成日時：2023年6月1日 23時
