忘れ得ぬ抱擁 2/ 政(リク) ページ29
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「……政様、この前遠出した折に美味しい果実を見つけたのです。今度お持ちしますね」
政の無言の貫きに敵わぬと判断したAは、呼びかけの名を改めて言い直す(因みにこのやり取りも度々起こっている)。
本当は、ただの王族であればもう少し自由が効き、Aと政が共に行くこともできたであろう。だが、有事の際や特別な式典でもないのに普段王宮から政が出ることは非常に難しい。
雁字搦めの、玉座。多くの血と、多くの怨嗟と、多くの何かをどんどん重ねていく玉座に座る孤高の王。
「ああ、楽しみにしている」
小さな意地の張り合い(と呼ぶ程でもないかもしれないが)に勝った政は、嬉しそうに返事をする。
些細なことでも、彼女が自分のために動き、叶えようとしてくれることが政にとってとても幸福で愛おしい。
『政様っ…政さ、ま……。やっとお会いできました…』
自分とどこか容姿の共通さを連想させる少女は、自分を見守る兵士たちと同じように甲冑に身を包み、趙兵を倒す際に浴びた血で汚れてはいたものの、どこか気高く美しかった。
優しく包み込むような抱擁に、政は穴だらけの心が少し塞がるような心地がして。
目の前の少女に、Aに、必死にしがみついて泣いていた。
あの時の抱擁がどれ程、政を救ったことか。
入り込んでくる微風に揺れるAの漆黒の長髪。初めて会った時より伸びた髪の長さが、年月を物語る。
そっと手を伸ばしAの髪に指を絡ませる政。Aは可笑しそうに笑う。
「お好きですね、これ」
慣れたように返すA。政が私的な時にこうしてAの髪で遊ぶのは初めてのことではなく、最初こそ戸惑ったAも今では慣れてしまった。
少しぐらい動揺したり意識してくれたりしてもいいんじゃないか、なんて内心不満が募るものの、彼女がこうして受け入れる相手も限られているのを知っているので今は我慢することにした。
いいのだ、少しずつ意識させていけばいい。
王の隣、唯一の座を、政は他の女性に座らせるつもりはない。
「そろそろ行くか」
「はい、大王様」
今度は自分が、彼女を包み込むことができたなら。
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《作者のひとりごと》
ハルさん、リクエストありがとうございました！お待たせ致しました！
王族出身ヒロインです。(実は瑠衣公女とこっそり仲良し 笑。諸事情で昌文君の部下です。)
信とかたちとも絡ませてみたいですね。何だか気が合いそう(笑)
ではでは！
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つかの間の邂逅 1 /左慈(リク)→←忘れ得ぬ抱擁 1/ 政(リク)
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葵 - この話好きすぎて何回読んでも飽きません いきなりですがリクいいですか？政の妹で信と蒙恬と王賁と貂ちゃんで絡んで欲しいです (2021年11月22日 10時) (
レス) id: 1b00569172 (このIDを非表示/違反報告)
識(プロフ) - なんかもう昌平君の話がもうたまらない！！！いつも読んでは感動しています！ (2021年5月31日 11時) (レス) id: 8de27f30e5 (このIDを非表示/違反報告)
ハミィ - リクエストです！桓騎将軍の話を書いて欲しいです！出来たらお願いします。どの話もとても面白いです！ (2020年9月9日 3時) (レス) id: b2c428b5bb (このIDを非表示/違反報告)
いちご飴 - また慶舎書いてほしいです！激甘で！ (2020年8月11日 11時) (レス) id: fe4f65c6ae (このIDを非表示/違反報告)
midori(プロフ) - るーるるさん» 初めまして！るーるるさん、初コメントありがとうございます！作品を大好きだと言って頂けて、とっても嬉しいです！ リクエストもありがとうございます。輪虎、承りました！素敵なお話をお届けできるよう頑張ります！ (2020年6月17日 13時) (レス) id: 55b1e5ee37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：midori | 作成日時：2020年5月7日 14時
