蝶を狩る沈黙の狩人 2 / 慶舎(リク) ページ16
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慶舎は「A、」と天幕の外から呼びかける。だが、応答はなく静かなまま。
「入るぞ」と声をかけて中へ進む。
そこには、寝台に上体を預けて静かに寝ているAの姿があった。
近づいて見れば、その目元は赤く腫れている。
「A…」
そっと、目元を優しく撫でる。
お前は、私のことを想って泣いていたのか。
お前の心をいま大きく占めているのは、この私なのか。
「……っ…ん？…け、いしゃ…さま？」
Aは少し遅れて気配を感じ目を覚ます。
ぼんやりと目を開けるとそこには上官の慶舎の姿が。
徐々にはっきり意識が覚醒すると、途端に林檎のごとく顔を赤面させた。
「え！？え、け、え！？」
「落ち着け」
慶舎はAを引き寄せて腕の中に抱きしめる。Aはそれでさらに混乱する。
「な、なぜ慶舎様がここに…」
「李牧様がお前が天幕へ戻ったと教えて下さった」
そうして来てみれば泣いた後のAの姿。
「A」
ピクリとAは身体を揺らす。
慶舎はAの髪をゆっくりと撫でてAを落ち着かせる。
「すまない、お前を傷つけた」
それも自分勝手な嫉妬によって。
お前は私を気にかけてくれたというのに。
Aはふるふると首を振る。
「いいえ、私の不甲斐なさでございます」
貴方様の部下に相応しくないのかもしれない。
慶舎はAの両肩をぐっと掴んでま向かう。
「違う、私が…李牧様に嫉妬したのだ」
「え？」
慶舎様が…嫉妬？
Aは驚いてぽかんとしてしまう。慶舎はその間抜けな顔に笑みがこぼれる。
滅多にない慶舎の笑みに、Aは今までと異なる甘い何かが身体を駆け巡った。
「嫉妬するさ、この私でも。例え李牧様相手でも、お前を取られたくない」
お前はそんな私の嫉妬が恐ろしいか。
Aは慶舎の真剣な眼差しに目を逸らすことなく、真摯に向き合う。
「いいえ。今、貴方様の心はこのAに向いておられます。それがどれ程幸福で、甘美なことか」
慶舎様。
Aは慶舎様のものでございます。
「お前から煽ったのだ、覚悟しろ」
沈黙の狩人は、そうして美しい蝶を搦め捕った。
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《作者のひとりごと》
いちご飴さん、リクエストありがとうございました！お待たせ致しました！
嫉妬する慶舎さん。けどきっとヒロインへの独占欲は李牧様にも負けない(笑)
仲直りした2人を見て李牧が揶揄う…かもしれない(笑)
ではでは！
大切で特別な少女 1 / 李牧(リク)→←蝶を狩る沈黙の狩人 1 / 慶舎(リク)
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葵 - この話好きすぎて何回読んでも飽きません いきなりですがリクいいですか？政の妹で信と蒙恬と王賁と貂ちゃんで絡んで欲しいです (2021年11月22日 10時) (
レス) id: 1b00569172 (このIDを非表示/違反報告)
識(プロフ) - なんかもう昌平君の話がもうたまらない！！！いつも読んでは感動しています！ (2021年5月31日 11時) (レス) id: 8de27f30e5 (このIDを非表示/違反報告)
ハミィ - リクエストです！桓騎将軍の話を書いて欲しいです！出来たらお願いします。どの話もとても面白いです！ (2020年9月9日 3時) (レス) id: b2c428b5bb (このIDを非表示/違反報告)
いちご飴 - また慶舎書いてほしいです！激甘で！ (2020年8月11日 11時) (レス) id: fe4f65c6ae (このIDを非表示/違反報告)
midori(プロフ) - るーるるさん» 初めまして！るーるるさん、初コメントありがとうございます！作品を大好きだと言って頂けて、とっても嬉しいです！ リクエストもありがとうございます。輪虎、承りました！素敵なお話をお届けできるよう頑張ります！ (2020年6月17日 13時) (レス) id: 55b1e5ee37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：midori | 作成日時：2020年5月7日 14時
