瑞色涼想い 井上瑞稀&橋本涼

涼想い ５ ページ35

｢……もうエントリー開始してる？｣


｢うん！
でも当日飛び入り参加もOKだよ。｣


植田さんは、何枚もある資料の中からコンテスト詳細の紙を引っ張りだし


俺に手渡してくれた。


え、これ『外部には漏らさないこと』って書いてあるけど平気なの！？


わざわざ赤文字だよ！？


｢赤坂さん、だっけ？｣


｢えっ、あ、うん……。
羽場ちゃんと出たりするの？｣


｢まっさか！
友くんそんなキャラじゃないし、私当日仕事あるし。｣


あはは、なんて明るく笑う植田さん。




ータイミングと言うのは、悪いもので。



｢実験嫌だなぁ。｣


｢何で？眠くならないのに。｣


｢用意が面倒。｣


｢……あ、そうですか。｣


5時間目は化学室。


わいわい騒がしい廊下を、美華と歩いていれば


無意識に目が行く、3組の教室。


大きく放たれたドアから


チラッと横目で、覗いてみた。


｢ー……。｣


あぁ、見なきゃ良かったなって。


一瞬でそらすも


頭にこびり付いた光景は、離れなくて。


｢A？｣


急に黙り込んだ私を


美華はきょとんとした顔で腕をつついた。


涼が、親しげに女の子と話してた。


別にそれは良い。


その子が、男子の間で『可愛い』って噂されてたからだ。


人脈がそんなに広くない私でも


すぐにわかった。


顔近づけちゃってさ


ニコニコしちゃって。


何の話し、してるの？


真っ黒な感情が支配して。


心臓が


思い切り掴まれたみたいに、痛い。

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