ドクドク ページ19
.東
数時間後、俺はまたたびなんてもんを摂取させてしまった事を非常に後悔した。
「もりたさん、ひがしぶくろさん、大好きれす、いつもありがとございますうう」
この台詞、泣きながら言っているのだ。
Aは…泣き上戸らしい。
酔っ払って説教垂れる奴とかよりもタチ悪い。
動物が酔ってしまうと、本能が勝つようで
Aの感情は人間になってから今が1番表に出ている。
「A泣くなってー」
と、森田がティッシュで鼻をかませる。
「森田さん、私本当に幸せです、絶対絶対恩返しします」
「おうおう、そうやな、そうやな」
森田とのこの会話は3回目のやりとり。
なでなでとAの頭を撫でる森田を見ながらビールを流し込む。
食い過ぎた？少しもやっとする胸の上あたりをさする。
「あ、タバコきれた。買うてくる。」
森田は空箱をポンとテーブルに投げて
「Uberで頼めりゃええのにな〜」なんて呟きながら玄関の方へのたのたと歩いて行く。
あ、俺も、ないかも
と呼び止めようとしたら、
相手が居なくなったからかAが今度は俺の膝に乗ってきた。
「重い重い重い」
「あ、すみません」
ささっと乗ってきた体を離して
俺が座るソファに横並びに座る。
いや、別に、離れんでもよかったのに。
飲みすぎたのかなんやらドクドクと血液がまわる感覚がいやにうるさい。
「…うまい？」
「全部美味しいです、本当に、人間になれてよかったです」
そう言うAを見て、純粋にホッとする。
「でけへんことばっかりやもんな」
「そうですね、私はできないことばっかりです
散歩もラーメンもお花も、東ブクロさんに教えてもらいました」
「大袈裟やって」
俺も笑ってしまって、Aの頭を撫でた。
撫でると猫はぐねぐね柔らかい動きをする。
Aも同様に、俺の膝にぐでんと上半身を横にした。いわゆる膝枕。
「もっと、撫でて下さい」
気持ちよさそうな顔をするAに
心臓が掴まれる。
なにこれ？さっきから、うざったいなあ、ほんま。
「あほ、人間同士はそんなんしたらあかんねん」
しっし、と手をひらひら動かして
とりあえずAの体を離そうとすると
「…それだったら、猫のままがよかったです」
潤んだ瞳を
こっちに向けて
「はあ？」
「東ブクロさん、私が人間になってから、抱きしめたり撫でたり、キスだって全然してくれなくなりました。」
Aは、
またたびのせい…ではないような
今にも溢れそうな涙を溜めて
俺をただただ見つめるのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 109人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴぴ(プロフ) - まゆゆんさん» ありがとうございますー！すごく嬉しいお言葉(T_T)❤︎少しゆっくりになっちゃいますが気長にお待ちください☻ありがとうございます❤︎❤︎ (2022年9月12日 23時) (
レス) id: b6f7e28a9f (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆん - このお話すごく大好きです！！更新楽しみにしてます🥰 (2022年9月11日 7時) (レス) @page18 id: accb57b751 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴ(プロフ) - あんこさん» 読んでいただきありがとうございます！！めちゃくちゃ嬉しいです(T_T)❤︎ またよかったら覗きにきてくださいませ☻❤︎❤︎ (2022年8月18日 14時) (レス) id: b6f7e28a9f (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみにしてます！！♡ (2022年8月18日 10時) (レス) id: 9c65f5d707 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴぴ | 作成日時：2022年8月18日 2時
