Recorder 01 XXXX/XX/XX/00:09:34 no name ページ50
『もしもし』
『電話をくれるなんて珍しいな。何かあったのか』
『……いや、今は構わない。帰るのにそちらへ向かっているところだ』
『……あぁ、着くのは朝だな。……すまない』
『…空……？』
『……いつもと変わらない』
『……あぁ、なるほど。確かに今夜は満月だ。いつもよりは、はっきりと見えている』
『……あぁ、きれいだね』
『……星も見えている』
『……へぇ、Aのいる世界では、星はあまり見えないのか』
『……オレの生まれ育った街は……、いやそう呼んでいいのかも分からないが、星だけは美しかった』
『……流れ星？』
『……今、見えた？』
『……願い事？』
『……いや、願い事をするということはオレの世界でもある。Aはまじないや、そういった願掛けが好きなのか』
『……人はみな……そうか』
『……流れ星を見ると、願いをかけたくなるのか』
『……オレは……。そうだな。こう願おう』
『……明日もまた、Aに会えることを祈って』
『……Aも？ ならきっと、……』
『……はは、声を聞くと、今すぐにでも会いに行きたくなるね』
『……らしくない？ いや……Aが思うより、オレは案外ロマンチストだよ』
『……笑っているが、本気だ。星に願いをかけたくなる人間の気持ちも分かる。占いも、割りと本気にするタイプでね』
『……現に、どこかの世界から、突然Aが現れたんだ。今ならオレは宇宙人や幽霊だって信じられる』
『……あぁ。本気だ。オレは、霊魂って信じてる。魂だけの存在が、この世にあることを』
『……だから、今こうして離れていようとも……遠い場所にいようとも、Aとは繋がっていられてる気がするんだ。夜が明けて、君がいなくなった後も……オレはいつも想っている』
『……君は、今頃何をしているだろうか』
『何を見ているだろうか。どんな気持ちだろうか』
『君の見上げている空は、オレの見上げている空と、繋がってやしないだろうか』
『……そんなことを、考えている。』
『……ばれた？ ……あぁ、とある本の冒頭で出てくる一節だ』
『……そんなに怒るな。なら、Aがさっき言った、“月がきれいですね”も、本当はどんな意味か知っているな。そっちじゃ、有名な台詞だろう？』
『……聞かせて』
『……よく聞こえなかった、もう一度』
『……ご名答』
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作者名：アユミ | 作成日時：2018年11月15日 0時
