第四十五夜 本当に見たいのは ページ47
「記憶を、見れるって……」
そう言った瞬間、パクの手が私の額へと伸びた。さらりと風が通るように撫でていく。
何が起きたか分からず、私は目を瞬かせる。
そんな私の目をじっと見つめたパクはやがて口を開いた。
「……大体分かったわ」
今ので、本当に……?
「え、今ので……私の記憶を覗けたの?」
「ええ」
本当に……?そんなことができるの?
「だったら、……」
あの時の、ヒソカとのつまらないゲームもばれてしまったんだろうか。クロロのことを、知りたい、だなんて。
「だったら、なんだ…?」
クロロの台詞に、私は、いや、と曖昧な返事を告げる。
分からないことばかりよ。あなたも、そしてあなたたちのことも。何より、自分の気持ちが。
クロロ。どうして私はこんなに、あなたのことばかり考えてしまうの?
記憶を見れるとか、なんか変な超能力があるとか、もうこの世界の不思議出来事には今さら慣れっこで。この世界がどうとか、そんな大きなことを知るつもりはないのよ。どうして私がここにいるのか、出会ったのがあなたたちなのか。
そんなことよりも、もっと小さくて単純なたった一つ。
クロロ。あなたの全てを。
知りたかっただけなの。
「どちらにせよ問題がないならそれでいい。今後はAの護衛を少し強めていかなければならない」
「団長は、Aのこととなりゃ親のごとく甘やかそうとする。すっかりお姫さまだぜAは」
ノブナガがぼん、と私の頭に手を置いてぐしゃぐしゃと撫でる。
「護衛って、そんな大層な身分でもないよ……」
「念能力が通用しない。それだけで利用価値がある。あんたを欲しがる人間はいくらでもいるはずだ」
クロロが答える。
「だからそのねんのうりょくってなんなの?」
いつもそう。毎度毎度、私の目の前にそうやって知らないことを並べて置いてきぼりにする。
「……いらん知識を増やしたところで危険に晒すだけだ。Aは何も知らなくていい」
「もう、そうやっていつも私を蚊帳の外にする。まだまだ知らないことが沢山あるのに……っ」
「この世界は、あんたのいる世界とは違いすぎる。Aのいる平穏な世界とは程遠いものだ。知って得することもない。見なくてもいい闇に、これ以上足を突っ込むな」
「私が見たいのは闇じゃない!クロロなのに!」
言ってしまって、ハッとした。
「……その……」
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作者名:アユミ | 作成日時:2018年11月15日 0時