第四十一夜 気まぐれなピエロ ページ43
彼女の消えていく様は、まるで今までのこと全てが夢だったかのように、魔法が切れてしまったかのように、儚くも一瞬だった。
縛っていた紐が、彼女の身体の形を為したまま、そこに落ちていた。それは、今し方、彼女がそこで生きていたという何よりの証拠だった。月明かりの差し込むそこだけはまるで別世界のようで。
「コイビト……か」
ヒソカは苦笑する。
「このボク以外にそんな人間作るだなんて、妬いてしまうよ、クロロ」
ヒソカはゆっくりと顔を振り返らせる。
「Aはどうした」
そこにはクロロがいた。団のメンバーも何人かそこにいた。相変わらず汗一つかいておらず、息も上がっているわけではない。それでも、彼らが急いでここに到着したことは明らかだった。ヒソカはニヤリと笑った。
「よそ者、という答えはあながち間違っていなかったようだ。なぜクロロがそこまであの子に執着するのか、少し分かった気がするよ」
恋人。それもきっと間違ってはいないんだろうねェ。
「Aに手を出せば、殺す」
「本望だ」
クロロは、一枚のジョーカーをヒソカに投げていた。慣れた手付きでヒソカがそれを受け取る。
「そうか。なら遠慮せずに存分にできるな」
「フフフ。考え直してくれたのかい?」
クロロは、そのまま前を向き直すと、団員たちを連れて歩き出した。
幻影旅団入団の許可。このジョーカーがその答えだろう。
「ちょっと、これでいいの?」
団長について行きながら、シャルナークがノブナガにぽそりと耳打ちする。
「知るかよ。最終決定権は団長にある」
「えぇ、でもオレいやだよあんなヤツと一緒にいるなんて」
「仕方ねえだろ、だったら今すぐあのピエロを殺ってこい」
「ええー……」
「悪いんだけど、クロロ。ボクは気まぐれでウソつきなんだ。だから、決めたことをコロコロと変えてしまう悪い癖がある」
ヒソカの言葉に、クロロの足がピタリと止まる。
「暫く幻影旅団との接触は控えようと思う。よって、ボクは団には入らない。このジョーカーはそれまでキミに預けよう」
クロロの足元にジョーカーが飛ぶ。
「え、ちょ、どゆこと?」
「知るか」
シャルナークはノブナガに問い掛ける。
「それじゃあね」
ヒソカは、手を挙げ歩き出す。
……どうせ殺り合うなら、もっと楽しい方がいいだろう? ねえ、団長……?
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作者名:アユミ | 作成日時:2018年11月15日 0時