検索窓
今日:2 hit、昨日:10 hit、合計:61,614 hit

第四十一夜 気まぐれなピエロ ページ43

彼女の消えていく様は、まるで今までのこと全てが夢だったかのように、魔法が切れてしまったかのように、儚くも一瞬だった。

 縛っていた紐が、彼女の身体の形を為したまま、そこに落ちていた。それは、今し方、彼女がそこで生きていたという何よりの証拠だった。月明かりの差し込むそこだけはまるで別世界のようで。
 
「コイビト……か」
 ヒソカは苦笑する。
「このボク以外にそんな人間作るだなんて、妬いてしまうよ、クロロ」

 ヒソカはゆっくりと顔を振り返らせる。

「Aはどうした」
 そこにはクロロがいた。団のメンバーも何人かそこにいた。相変わらず汗一つかいておらず、息も上がっているわけではない。それでも、彼らが急いでここに到着したことは明らかだった。ヒソカはニヤリと笑った。

「よそ者、という答えはあながち間違っていなかったようだ。なぜクロロがそこまであの子に執着するのか、少し分かった気がするよ」

 恋人。それもきっと間違ってはいないんだろうねェ。

「Aに手を出せば、殺す」
「本望だ」

 クロロは、一枚のジョーカーをヒソカに投げていた。慣れた手付きでヒソカがそれを受け取る。
「そうか。なら遠慮せずに存分にできるな」
「フフフ。考え直してくれたのかい?」
 クロロは、そのまま前を向き直すと、団員たちを連れて歩き出した。

 幻影旅団入団の許可。このジョーカーがその答えだろう。

「ちょっと、これでいいの?」
 団長について行きながら、シャルナークがノブナガにぽそりと耳打ちする。
「知るかよ。最終決定権は団長にある」
「えぇ、でもオレいやだよあんなヤツと一緒にいるなんて」
「仕方ねえだろ、だったら今すぐあのピエロを殺ってこい」
「ええー……」

「悪いんだけど、クロロ。ボクは気まぐれでウソつきなんだ。だから、決めたことをコロコロと変えてしまう悪い癖がある」
 ヒソカの言葉に、クロロの足がピタリと止まる。

「暫く幻影旅団との接触は控えようと思う。よって、ボクは団には入らない。このジョーカーはそれまでキミに預けよう」

 クロロの足元にジョーカーが飛ぶ。

「え、ちょ、どゆこと?」
「知るか」
 シャルナークはノブナガに問い掛ける。

「それじゃあね」
 ヒソカは、手を挙げ歩き出す。




 ……どうせ殺り合うなら、もっと楽しい方がいいだろう? ねえ、団長……?

第四十二夜 彼女が信じる限り、世界は存在し続ける→←第四十夜 無意味な遊戯で終わらせて



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
185人がお気に入り
設定タグ:HUNTER×HUNTER , 幻影旅団 , クロロ   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アユミ | 作成日時:2018年11月15日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。