第三十六夜 緋色の瞳 ページ38
「そう……なんだ」
「オレも、ちょっと行ってみたいかも。Aの生きてる世界」
ずっと待っていたかのような台詞を言われて、どうしてそんなにクロロたちが自分のことを頑なに拘っていたのか、今少し分かった気がした。
切ないような空気が流れて、私は黙り込んだが、すぐにハッと思い起こした。
「って、話を反らさないでよ！一体何を見つけたの。めぼしいものって？」
「う、バレたかぁ〜。団長の話するとAも真剣になるから、つい」
「早く教えてよ」
「……もう、せっかちだなあ……」
シャルナークの話を聞いていて、一つ思う。私はいつか、今の彼らの側から離れて、時を越えてしまうのか、と。幼い皆の前に私は現れる。しかし、私にそんな記憶がないんじゃ……。これから、そんなことが起きるというのだろうか。
どうして……私はこの世界に迷い混んでしまったの？
「A、大丈夫？」
「え、いや、ううん」
「Aの方が聞きたいって言ってたのに〜。ぼうっとしてたんじゃ教えんのやめようかなあ」
「ぼうっとしてないしてない！」
「ジョーダンだよ」
けらけらとシャルナークは笑うと、ずい、と顔を私の前へ寄せる。
「……Aの瞳、すごくきれいなハシバミ色だね」
「な、なに……？」
そう言ったシャルナークの顔はゆるりと目が細められ、少し微笑んでいるように見える。あなたの方が、よほどきれいだよ。微かに細められたエメラルドがちらりと覗く。
「感情が高ぶると、燃えるような赤い瞳になる」
「？」
まるで誰かの受け売りのようなその言葉に、私は目を瞬かせる。
「今回のオレたちの獲物さ。とある一族の瞳。団長はこれに目をつけた」
「ひと……み？」
「そう目玉。今回の幻影旅団のターゲットは、クルタ族の赤い目」
「赤い……瞳」
「この瞳の力がすごいみたいでね、奴らはその力で更に強くなるらしい。オレが調べた結果によるとね」
テーブルの上の冊子をシャルナークは手に取った。
「人の感情が、最も昂るときってどんな時だと思う？」
シャルナークの問いに、私はすぐさま質問の意図を汲んだ。言葉を濁す私に、シャルナークは悪戯っぽく笑った。
「怒りだよ。人は怒っているときが一番感情の気丈が激しい」
「それって……」
「うーん、なんかしらやって怒らせて、赤い瞳を奪うって算段かなぁ」
「それ……」
「まあ、死んじゃうだろうね。ってか、最初から生かすつもりないし。そもそも目玉を頂くんだから」
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作者名：アユミ | 作成日時：2018年11月15日 0時
