【Ｈ×H】長月のセレナーデ【幻影旅団】 (ページ33)

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第三十一夜　ワンルームに君を添えてページ33

「プリン？」
　目を覚まし、いつも通り彼らの世界にお邪魔する。開幕突然に、私が突然プッチンプリンを差し出したのだから、クロロは怪訝な顔をした。
「知ってる…？」
「あぁ。甘いものの中でも、特に好きなものだ」
　私が差し出したプリンをクロロは受け取る。そして、小さく「懐かしいな」とだけ笑って見せた。
「明日の午後のブレイクタイムに添えるとするか」
　はは、と笑うそれはなんだか胡散臭い。いちいち小洒落た言い方をするのが鼻につくが、なんだかそこが憎めないのもこの人の魅力なのだろうか。
「なんだ、こっちの世界にもあるんだ……」
「当たり前だ」
　クロロはそう言って、テーブルの上にプリンを置いた。この部屋は、当然団長クロロの部屋。ここは、この前私たちがいた街とは違うようで、少しだけ都会である。今は、この空きビルを拠点として活動しているようだった。
　そして、クロロたちがどこへいようと、当然夜になる度私はきちんとその場に現れるらしい。不思議なものね。

「ダウト」
「……やっぱバレた？」
「シャルが出せるはずないもの。だってエースは全部私が持ってるし」
「そりゃ悪手だよ……」
　シズクの淡々とした言い分に項垂れるシャルナーク。ここは団長の部屋とか、そういう細かいことは関係ないみたい。ベッドではウヴォーがオオグチ開けて寝てるし。

「プライバシーもへったくれもないわね、このうちは」
「うち？ここは家じゃない。ただのアジトだ」
「世間では帰る場所を家って呼ぶの」
「他人が集まって暮らす場所は、家ではないな」
　クロロはそう言って、腰掛けてたベッドから立ち上がる。その反動で、微かにウヴォーが動いた。

　冷めた言い方。皆のことは、他人なんだ…。

「少し野暮用ができた。明日の朝には戻る」
「ちょっと、私もういないんですけど」
　クロロは手を挙げ部屋を出ようとする。
「……へぇ。必ずしもオレがそばにいるとでも？」
「…っ、…自惚れてなんか、ないけれど…。折角こっちに来ているのに、寂しいわ」
「素直だな。嫌いじゃない」
　と、それだけ言い残し、クロロは行ってしまった。別に、自惚れてたわけじゃない。でも、いつもクロロは私がここにいる時間をとても大切にしてくれたから。まさか、私がこっちに来ているのに、席を外すなんて信じられなかったからだ。

　…あぁ、ほんと。やっぱり、ただのうぬぼれだ。なんだか掌の上で、踊らされてるみたい。