【Ｈ×H】長月のセレナーデ【幻影旅団】 (ページ22)

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第二十夜　そして、少しずつページ22

「やっと……やっとAに会えた！」
　シャルナークはそう言って笑った。
「……」

「ねえ、どういうこと？」
　そんな様子を、黙って見ていたシズクは、フランクリンに問う。
「そのままだ……全部じゃないが、思い出したんだろ」
「それって、あたしたちのことを？」
「あぁ、名前だって、な」
「ねえ、じゃあなんで今まで覚えてくれなかったんだろうね」
「なんでだろうな…。でも、いいだろ理由なんて。お前だって、さっき名前呼ばれてたろ」
「うん。聞いたよ。嬉しかった」
「あぁ。…それでいい」

「A、昨日何をしたかは？」
　突然クロロにそう問われ、Aは首を振る。
「そうか……やはり微かにオレたちのことを覚えているくらい、か」
「あの腕の落書きが効いたんじゃない？」
　マチの一声に、あぁ、と頷くクロロ。

「やはり、向こうでオレたちのことを…」
「あの……私ね、何度か思い出したんだ…。向こうでも、クロロや、皆のこと。夢か、どうかも分からなくって……でも、とても、大切なことだって気がして…」
「なるほどな。向こうでも思い出したりしたから、こちらにもその記憶を持ってくることができたんだろう」
　そうだね、と彼女は頷く。

「やはり、あんたの言っていたことは本当だったか」
　クロロが苦笑する。よく分からないその台詞に、Aは首を傾げた。
「私が、なんて言ったって？」
「直に分かる」

「なんにしてもさ！本当、よかったよ。Aがちゃんとオレたちを覚えるようになって」
　シャルナークは、うん、と一つ頷く。
「昨日何をしたかは覚えてるのかい？」
　マチの問いに、あ、とAは記憶を探る。

「マチ…さん、と一緒に街を歩いた、記憶が…」
「へぇ、やるじゃん」
　しなやかできれいな手が頭に伸びる。くしゃり、と優しく撫でてきた手つき。繊細で、優しく消えそうな。それなのに、どこか真の通った強さを感じた。あぁ、そう。この人はそういう女性なのだ。

　あれ、何で私ったら。まるで最初から知っているみたいに…

「あんた食べてばかりだったね」
　は、と小さく笑うマチに思わずAは我に返る。
「え、と…それは……」
「食べ歩きデートか。悪くないね」
　うむ、とシャルナークが頷き、ッハ、とウヴォーギンが笑った。
「デート……な」
「ウヴォーには一生縁の無いことだもんねぇ」
　笑い返すシャルナークに、ウヴォーギンが何だと、とシャルナークに詰めかかる。