【Ｈ×H】長月のセレナーデ【幻影旅団】 (ページ11)

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第九夜　なくした記憶ページ11

「団長…」
「ついに、言っちゃったね。このこと」
　マチが小さく呟いた。
「そもそも、この状況を夢だとか思ってる人間には、理解しきれねえ言い分だろコレ」
「分かりました…」
「…マジか」
　意外にも納得をした彼女に、ノブナガが少しだけ驚く。

「信じる、のか…？」
　ウヴォーギンは、Aに小さく、穏やかに語り掛ける。先程彼女に怖がられたのが、相当ダメージが来ているのだろう、とシャルナークは緩みそうになる自分の頬をつねってやる。
「わー、一年もこんなことしてきたのに、急展開だね」
　シズクは横にいたシャルナークに言った。
「一年じゃなくて、半年くらいね。でも、これが吉と出るか凶と出るか」
「でも、明日になったらまた、忘れちゃうんでしょ？それってさ、あんまり意味がないよね」
「シズク…それは、言わなくてもいいだろ」
　シズクの台詞にフランクリンが呟く。

　彼らの会話に、そうか、と彼女は思った。もう何でも良い、と思いとりあえずこの状況全てを受け入れることにしたが。彼らから、してみれば…自分はまた、忘れてしまうのだ。

　今のこの時間を全て。

「信じ、るというわけではありませんが…。夢でない、というのだって、未だに実感が湧きませんし…。でも、やっぱり、なぜか皆さんの言うことを、とても嘘とも思えなくて…」

　きっとその感覚こそが、答えなのかも知れない。何度も、この場所に訪れているから。例え記憶がなくなろうとも、身体だけは覚えていたのだ。ここは、何度も来た場所だ、と。

「A…」
　こちらを見上げているクロロに、彼女は言った。
「とりあえず、信じてみようと思います」
　そう言い、微笑む彼女。その瞬間、クロロは思った。やはり、例え記憶を無くそうと彼女は…

　変わらないのだ、と。

「そーかよ！やっぱりお前はAだなァおい！」
「！」

　ウヴォーギンに詰め寄られ、思わず彼女が避ける。そして、クロロの傍に寄った。
「……何でだよ団長…」
「あはは！やっぱ、ウヴォー、その人相じゃ怖がられるよね」
「うるせえシャルてめえ！くそう、餓鬼の頃は、一番オレに懐いていたのによっ…！」

　ウヴォーギンの言葉に、Aは首を傾げた。餓鬼の、頃？
「あぁちなみに、まだ幼かったあんたが、昔一度だけオレたちのところへ来たことがある」
「えっ…！」

　子供の、頃もだというのか。