第二十五夜 町外れの喫茶店 ページ27
町を歩き続け、クロロが案内したのは町外れにある喫茶店であった。住宅街の裏路地を通り、石畳の階段を上がり、町から少し外れた場所にそれはあった。
「わあ、素敵なお店」
「そう言うと思った」
店の入り口前に立ち、彼女が感嘆の声を上げると、クロロは笑みをこぼした。やはり、ここで正解だったようだ。
クロロが小洒落た扉を開ければ、心地よいベルの音が鳴る。それに気付いた店の主人がカウンターの奥から小さく会釈をした。初老の男性であった。店内にはピアノの心地よいメロディが流れており、視線を投げれば店の奥にあるピアノを誰かが弾いていた。それが客であるかここのスタッフであるかはクロロも知らない。
慣れた動作で中に入るクロロに、Aは少し笑って、もしかして常連？、なんて訊く。
「いや。二回目」
クロロはそう答えると、カウンターではなく、店の奥のテーブル席へ案内する。
「どうぞお嬢さん」
「どうもありがとう」
クロロの引いた席にゆっくりとAは座った。嬉しそうに笑い、両肘を付け、手に顎を乗せた彼女は言う。
「なんだか全然、ドレイって感じがしないね」
「お望みならば今から予定を変更する?」
にこやかに言ったクロロに、Aは笑顔でううん、と答えた。
「おしゃれなお店。ピアノも素敵だし」
「…ジャズか」
「音楽、詳しいの？」
「いや。だが嫌いじゃない」
クロロが主人へ視線を飛ばすと、何も言わずに彼がコーヒーを二つ持ってこちらまでやって来た。
「私、コーヒーは…」
「砂糖なしでたっぷりのミルク入り。だったっけ」
主人からコーヒーを受け取り、それをAに差し出しながらクロロは言った。
「やだ……どうして分かるの？」
そんな好みなんて話したっけ、とAは首を傾げる。
「さて、どうしてでしょう」
クロロは何も入っていないブラックコーヒーを口につける。そうだ、クロロは確か、とAは思い起こした。ここに来るのは二度目と言っていたっけ。きっとその時に私も来たのね、と妙に納得した。
「ねえところでクロロ」
「なに？」
「その……今更かも知れないけど」
彼女は辺りを憚るように、小さな声で言った。
「ちゃんと皆のことについて教えてよ。その……りょだん? のこととか」
「あぁ」
そうだな、とクロロは言って二口目のコーヒーを口にする。
「と、盗賊ってことは……それって、泥棒ってことでしょう？」
「そうだよ」
「……そうなの」
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作者名：アユミ | 作成日時：2018年11月15日 0時
