カゲのたからもの 4 ページ8
ボッジとも離れて、オレは花の中に身を隠す。Aの透き通った、オレたちを探す声だけが聞こえて、なんだか胸がどきどきしていた。
そっか。こういう気持ちも、全部。大事なものになるんだろうな。楽しいこと、ワクワクすること。そういうの、全部、オレはボッジと分かち合いたいって思った。
オレにも、それが、できるのかな。
たくさん、"ありがとう"って。
渡せるかな。
遠くで、ボッジの見つかった声が聞こえた。高く響く笑い声。楽しそうだ。もうすぐ、オレのとこにもくるかな。
見つけて、もらえるかな。
きっと、Aは…。すぐに見つけちゃうよな。
だって、アイツ、そういうの得意だから。
悲しんでいる声を、泣いている声を、すぐに見つけてさ。
そんで、すぐに連れ出してくれんだ。
きっとどんな闇の中にいたとしても。
必ず。
「あ。」
花を掻き分けた、手。
光と共に、覗いたのは、オレが一番綺麗だって思う笑顔。
「カゲくん、やっと見つけたっ…」
花びらのたくさん舞う中、オレを見て微笑むAは本当にきれいで、オレはなぜか泣きそうになった。
たくさん、悪いことをしちまったオレだけど…。
Aの笑顔を見ると
ほんの少し救われるような
許されたような
そんな気がするんだ。
「カゲくん、みーっけ」
かあちゃん
もし、この世に神さまがいたら
きっとこんな風に
オレたちを見つけて
微笑んでくれるのかな。
「あえ、いーっえ!」
「ふふふ、カゲくんったらお顔に花びらがついてますっ」
「お、お前らだってついてるぜ…」
ボッジとAが、顔を見合わせて楽しそうに笑ってる。
ふわふわ、花びら。
どこか懐かしいような、優しい匂い。
笑っている二人が、とても綺麗だ。
ぜんぶがまるで、一枚の絵みたいに。
なぜだか分からないが…
今この瞬間は…
もう二度と訪れやしないような気がして
二度と忘れないようにと
オレは、深く目に焼き付けた。
「それっ!ボッジさま、花吹雪〜」
「ふふふっ、あぁい〜」
「カゲくんもっ」
花びらをすくって、Aが散らす。
落ちていく一枚一枚、オレには止まって見えた。
なあ、頼むよ
もし、この世に神さまがいるなら
オレの大事なもんを攫っちまわないで
やっと見つけたんだ
オレの大事な…
どうか
連れて行かないで。
ーーーーーー
宝物が増える度に
幸せと同等の
不安や闇が押し寄せてくる
もう、ひとりはごめんだ
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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時