カゲのたからもの 3 ページ7
なあ、ボッジ。オレ、上手くできるか分かんねえけど。
これからも、この先も。
お前にとって必要かも、分かんねえけど。
オレ、これからもお前にたくさん渡していきたいんだ。
お前がオレにたくさんくれたように。
嬉しいことも、照れくさいことも、楽しいことも。
お前と一緒にいて、溢れ出てくるそういう気持ち。
ずっとお前に渡していきたいんだ。
オレ、お前が笑ってくれると嬉しいからよ。
嬉しくて、堪らないからよ。
だから、何度だって伝えていいかな？
｢ありがとう、ボッジ。やっぱりお前は本当に、最高だぜ！｣
ありがとうと、大好きを。
｢あいあおー｣
｢ありがとう、ですって！｣
｢そんなん、分かってるし…！｣
A。お前は何で、そういう人の"柔らかい"ところ、簡単にすくい上げて、ほぐしちまうんだろうな。
Aがくれる言葉は全部、魔法みたいに心に溶け込んで、なんだか元気が出るんだ。
A…、お前だって、同じだかんな。
｢元気が出たみたいで、良かったです｣
｢おいAっ、お前だって、そうだからな！｣
｢…え、｣
｢あい！あうあ、あうー、あうあ！｣
｢、ボッジ、さま…？｣
｢お前からだって、たくさんもらった！て。ボッジはそう言ってるぜ｣
｢ボッジさま…｣
そう言ったAは、優しく嬉しそうに笑った。
｢そうですね。人はそうやって、気持ちを互いに渡し合って…互いを、好きになっていくのでしょうね｣
｢あぁ｣
｢あうあ、あいあおーっ｣
ボッジがニッコリして言った。
｢はいっ。私もありがとうございます。皆、ありがとうですねっ｣
Aがそう言った時、強く、風が吹いた。ぶわ、と花びらが舞って、地上へ向かって吸い込まれていく。
｢本当に、綺麗なところ…｣
それを見上げるAは、何を思ってるんだろう。愛しそうに目を細めるそれは、きっとここにはいない誰かを想っているんだろう。
それが誰なのかってのは、オレにはなんとなく想像がついて。
｢あうっ、あーい！｣
｢え、何、かくれんぼ！？｣
突然、ボッジが叫んで、かくれんぼを提案する。
｢え、かくれんぼですか？｣
｢確かに、ここなら…隠れがいありそうだな！｣
｢突然ですねぇ｣
｢じゃーAが鬼だ！行こうぜボッジ！｣
｢え、ちょ、そんな急に…｣
｢あいっ！！｣
ちゃんと10数えろよ！とオレはボッジの手を引いて走り出す。
戸惑うAの声が遠くなって、オレはボッジと顔を見合わせて笑った。
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作者名：アユミ | 作成日時：2022年5月31日 2時
