カゲのたからもの 2 ページ6
「オレはお前みたいに素直にはなれないから…なんか、そうやって、本当の気持ちを真っ直ぐ伝えられているのが…なんか、すごく眩しくて、キラキラしてるっつーか…。それに、アンタはいつもオレに嬉しい気持ちをくれる。すげえよ、A。オレは、そういうもの、人に、あげられないからよ…」
照れたように、でも少しだけ悲しげに言うカゲくんだった。
そんなこと…。そんなこと、ないのに。
そんなこと、あるわけない。
「そんなことは、ないですっ!」
「…え、」
「カゲくんも、私には…眩しいです」
「何言ってんだよ、オレなんかその名の通り、カゲ一族だぜ…。今までだって、コソコソ隠れながら盗みもしたし、オレたちは人だって殺してきたんだっ。なのに」
カゲくんの、ちっちゃな両手をそっと握った。
だってこの手は、何度だって守ってきたんでしょう?
今あなたのそばにいる、未来の王さまを。
「でも、カゲくんは…ボッジさまにとって、たった1人のかけがえないお友達でしょう?ボッジさまのこと、自分のことのように喜んだり、励ましたり、たくさん応援して、時に叱って、一緒に笑って…。そういうキラキラした気持ちを、カゲくんはボッジさまに渡していると思いますよ。もちろん、私も、嬉しい気持ち、あなたからたくさんもらいましたっ」
今だって。
「こんなに、素敵な景色を見せてくれたんだもの」
「…A…」
今握っている優しい手が。不器用なこの手が、何度だって差し出してくれたのよ。
嬉しい気持ち、温かい気持ち、そういう優しくて柔らかいたくさんの愛を。
「そうですよね、ボッジさまっ」
そう言ってボッジさまの方を振り向く。するとボッジさまは必死になって、頷いて、そして一生懸命に語った。
「あうっ!あうあ!ああい、あぇい!」
「…ボッジ…!」
『カゲは、ぼくにいつも、くれるよ』
『楽しい気持ちも、嬉しい気持ちも、たくさん…』
『幸せを、たくさんもらっているよ』
ボッジさまの言ったこと、詳しくは分からないけれど、何を伝えようとしているかは私にはなんとなく理解できて。
そうだよね。
何も渡せていない、なんてそんなことなくて。
たくさん、貰っているよね。
カゲくんは、たくさんの宝物を、ボッジさまに。
抱えきれないほどの、たくさんの想いを。
「…、ぅ、ボッジ…お前…お前は、なんでそんなに、良い奴なんだよちくしょうっ、」
ぽたぽた、きれいな涙がカゲくんの瞳から溢れた。
「ありがとう、ボッジ…」
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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時