甘い素顔にご注意。2 ページ4
視線を上げればふわりと隊長の香りがした。それは、汗と鉄と、そこに僅かに混じる石鹸の香り。
気付けば頬に添えられた大きな手と、額に触れた温かい温度と柔らかい感触。
ガチャン、と隊長が兜を被る音が聞こえた。
｢…え｣
今…。
｢なに、を…｣
呆気に取られて固まった私に、隊長はいつもの兜をしたまま笑った。
｢すまん、少々いじりたくなってしまってな。あまり褒められると、男という生き物は調子に乗るのだ｣
その面の向こうにあるお顔は、きっとどこか悪戯な笑みを浮かべているに違いない。頬を真っ赤に染め固まった私を見て、隊長はそっと顔を覗き込む。
｢少し、からかいすぎてしまったか｣
カチャン、と音を立てて兜が目の前にずいっと現れる。
｢い、いきなり何をなさるんですか！？｣
ようやく動き出した私を見て隊長は、
｢ははっ。やはりお前にも、面が必要そうだな｣
そう言ってぐしゃぐしゃと私の頭を撫でる。それはまるで、幼い子どもをあやすかのような仕草で。
憧れのこの大きな手に、こんな風に赤面させられる日が来るだなんて。私としたことが…。
ただ、強いだけじゃなかったこの格好良すぎる隊長に、きっと私は一生敵わないんだろう。
だったらせめて、一日でも早く。隊長に強くなったと言われるような自分でありたいから。
｢た、隊長は、罪作りなお人ですっっ！！｣
｢…どっちが｣
負け惜しみで言ったその台詞は、にかにかと笑うこの人には通じない。
ーーーーーー
その顔を見たら、思わずしてしまったのだ。
まあ、不可抗力というヤツだな…。
どうか王には、ご内密に。
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作者名：アユミ | 作成日時：2022年5月31日 2時
