甘い素顔にご注意。 ページ3
それは、ある日の出来事。その日は、隊長と一緒に門の前で見張りをしていた。
「ねえ隊長」
「なんだ」
「隊長は、一体どんなお顔をされてるんですか?」
「…急だな。興味があるのか」
「そりゃあ、もちろんですっ」
「…別に普通だぞ」
「でも、気になります」
「ここの騎士団はあまり兜を外さない。まあ、お前は例外だが…」
「チラッとだけ、見せていただくことは?」
「見ても面白くもなんともないぞ」
「でも、デスパーさまが以前…。隊長は私の次にいい男だ、と」
「じゃあ外さない」
「な、なぜです!?」
「そんなにハードルを上げられたなら尚更だ。ガッカリされても傷つく」
「私、隊長がどんなお顔であろうと落ち込んだりしませんっ」
「なら別に見せる必要もない」
「…、」
「なんだその不服そうな顔は」
「ずるいですよ、デスパーさまだけ知っていたなんて。私だってこの騎士団の一員です。知る権利はありますっ」
「…全く、わがままなヤツだ」
「どうしても、ダメですか…?」
落ち込んで見せた私に、少し心にきたのか隊長は小さくため息をついた。
「…はァ。一度だけだぞ」
「良いのですかっ?」
「仕方なくな」
「…やったっ」
そして、隊長はすっとその兜を外して見せる。首筋が見えて、そして唇、鼻先が見えた時。
「…!」
「これでいいか?」
兜を外した、隊長の素顔がそこにあった。それはそれは、素敵な男性がそこにいたのだ。
「…た、隊長…?」
「なんだ、あまりじっくり見つめるな」
「す、すみません…。その、思った以上に…端正なお顔だったものでつい…」
「褒めても、何も出てはこんぞ」
「ほ、本当です…」
そう言って私は視線を逸らす。想像以上、だった。こんな綺麗なお顔立ちだったとは。デスパーさまとはまた違った類の整ったお顔。うーむ、これは冥府の女性たちがほおっておかないぞ。なんだか、隊長がこんな素敵な男性だったなんて少しドキドキしてしまいそうだわ。そう思うと、もうまともに隊長のお顔を見れない。こっちは面をしていないのだから、赤くなった頬を見られるわけにはゆかない。
「なんだか、思わず見惚れてしまいそ…」
笑って言うつもりだったのに。
言い切ることは、できなかった。
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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時