そっと結んで。 ページ19
｢んぅう…｣
きゅ、と両手でで抑えこんで片手を離す。リボンを巻こうとすると、ボサッ。
｢…うわーん、なんですぐほどけちゃうのっっ｣
最近髪が伸びて邪魔なので、てっぺんでお団子にしようと思っていたのに。なかなか上手にできない。
｢Aくん、時間ですよ。…何してるんです？｣
少し支度の遅い私が気になったのか、デスパーさまが部屋へ覗きにくる。
｢デスパーさまっ、お団子が上手にできません…｣
ぴえーん、と大袈裟に半べそかく私に、｢あらあら｣とデスパーさまは笑った。
｢どれ、少し貸してご覧なさい｣
｢…お願いします｣
リボンをデスパーさまに渡す。
鏡越しに、デスパーさまがまるで魔法を使うかのように、慣れた手つきで一本も髪をはね散らかすことなく、丁寧に結んでいくのが見える。
｢髪、だいぶ伸びましたねぇ…｣
頭上で柔らかな声がする。
｢稽古にはうっとおしいので…。やっぱり切ってしまうべきですかね｣
笑いながらそう答えると、｢いいえ｣とデスパーさまは続けた。
｢あなたの髪はこんなに綺麗ですから…もったいないですよ｣
少しのお世辞もないデスパーさまの言葉に、えへへと照れ笑いするほかない。ほら、とデスパーさまが私の肩を叩いた。
｢わぁ！すごい！！｣
｢よく似合っていますよ｣
｢とてもかわいいですっ、デスパーさまっ｣
ふふ、とデスパーは微笑む。
｢いつも可愛らしいですよ、あなたは｣
そう言ってくれたデスパーさまは、まるでお母さんのようで、むず痒い温かさと、心地良さが胸に広がった。
｢…ありがとうございますっ、デスパーさま｣
｢気に入っていただけて何よりです｣
｢でも、どうしてこんなにお上手なんですか？デスパーさまは髪、長くないのに…｣
｢…ハンサムは、女性を喜ばす技くらい幾らでも持ち合わせているものですよ｣
ふふん、とデスパーさまは息を鳴らしてみせる。
｢さすがです、デスパーさま｣
｢さぁ、修行に参りましょうか｣
｢はいっ｣
ーーーーーー
｢む、A！なんだか今日は、素敵な髪だね！｣
｢デスパーさまにやっていただきましたっ｣
｢さすがはデスパー兄、こういうのはお手の物ですね！｣
｢ふふ…もっと言いなさい｣
｢おいお前たち、あまり調子に乗らすなよ｣
｢あら兄者も髪が伸びたようですねぇ…。お手伝いしましょうか？｣
｢おい待てﾝなんだそのリボンはっっ｣
｢デスハーさま！！おそろいにいたしましょうっ！｣
｢誰がするかっ｣
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作者名：アユミ | 作成日時：2022年5月31日 2時
