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【本編】冥府と花の騎士44 ページ18

デスパーさまは、そうして"黄泉の国"について語って下さった。

 黄泉の国…。それは、神と人とが手を取り合い、立ち上げた国だった。

 人々は神を恐れ、また神々も人を支配した。そんな時代に終止符を打とうと、作られた国…。

 人も神も、等しくともに生きていける世の中を。

 それが、黄泉の願いだった。

 初代の王はある一人の神が、そしてその王妃は一人の人間が。そんな二人に続いて少しずつ集まった神々と人々。小さかった村は、いつしか国へ。街が生まれ、たくさんの人々と神の暮らす夢のような国が誕生した。

 ほんの少しだが、神と人とが分かち合い共生していた時代が確かに存在していたのだ。しかし、平和というものはそう長くは続かない。

 神々を恐れる人間と、そしてそれを支配したがる神々。あっという間に人にも神にも黄泉の国は疎まれ、蔑まれ、戦いは始まってしまった。

『なぜ我々は、対立する』

『どうにか、手を取り合えないのか』

『どうにか、分かり合えないのか』

『共に生きられる道は…』

 黄泉の叫びは虚しく響き、誰にも届くことはなかった。

「幾日も続いた戦いの末、黄泉の国は滅びました。たった一国で、幾つもの国や神々に立ち向かわなければならなかったのですから…」
 デスパーさまはそう言った。
「国は滅んだといえど、当時の国民も散り散りになって、今はどこかの国で皆それぞれひっそりと暮らしていると聞きます。あなたもそのうちの一人…。ただ、あなたが他の方と違うのは…」
「違う、のは?」
「あなたの親は、黄泉の国の王だからです。あなたは、黄泉の王族の、最後の一人なのですよ」
「私、が…王族…?」

 なん、ですって…。私の親が、かつての王国の王だと…?

「ど、どうしてデスパーさまがそんなことをっっ…!私、この冥府以外での記憶はありません!生まれた時から、この国に…」
「えぇ。それは、本当ですよ。あの国が滅んだのも随分昔のことですから。黄泉が滅んだ時、当時戦に参加していたサトゥン王が、黄泉の王族たちを攫っていったんです。あなたはその後に、冥府で生まれました。そして、不老不死の力を持つと言われる黄泉の子を…つまりあなたを、サトゥンは自分のものにしたんです」
「…、」
「サトゥンが遺したあなたの記録に全て記載されておりました。黄泉の国の戦争なんて、私も、もちろん兄者ですら知らなかった。兄者もまだ、生まれてすらいませんでしたから」
「そんな…」

そっと結んで。→←【本編】冥府と花の騎士43



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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時

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