【本編】冥府と花の騎士43 ページ17
デスパーさまの突然の問いに、あれ、と私は首を傾げる。いつから、できるようになっていたのかしら。いかんせん城に閉じ込められる前の記憶が殆どない。
家族のことも。
「あんまり覚えてはいませんが…きっと家族の者を見て真似たんだと思います」
「そうですか」
デスパーはそう答えると、またスプーンを手に取ってシチューを一口飲む。
「…先ほど、話さなくてはならないことがあると言いましたね」
「はい」
突然、神妙な面持ちのデスパーさま。私も、持っていたフォークをテーブルに置く。
「…あなたのご家族…いや、国のこと、を」
「国…?」
国、とは。私の国は、この冥府なわけであって。昔のことは覚えていないが、私はきっと、生まれたときからこの国で…。
「何から話せばいいのやら…。まあ、そうですね。まず始めにあなたに伝えるべきは…あなたは、黄泉の国の出身だということです」
「よみ…え?」
今、デスパーさまはなんと?
「聞いたことは、ありませんか?」
「え、と…」
いや、初めて聞く国の名前だった。そもそもこの冥府以外の国のことも、あまり…。
「あなたのその、命を吹き返す力も、ご両親から受け継いだものです」
「…あぁ、確か、先祖に神一族がいたとか…」
「ええ。それが、黄泉の国ですから。人間を支配しようとする神の一族がいる一方、人間との共生と友好を望む、神も存在したのです」
「人間との共生…」
「まあ、本当にそれはごく一部の神々でしてね…。それでもごく少数の神々と人とが、手を取り合って生まれた国が、黄泉の国です」
「そこで、私が…?」
「えぇ」
「で、では、今その国はっ。その黄泉の国は一体どこにあるのですかっ。私はどうして、冥府に…」
「もう、滅びました」
そんな、気はしていた。
「そう、ですか…」
「滅ぼしたのは、それをよく思わない神々です。単純に、彼らにとっては面白くはなかったでしょうね。散々支配してきた人間と今更手を取り合って仲良しになりましょうだなんて、到底彼らが受け入れるはずがありません。無論…」
口をつぐんだデスパーさまに、私は顔を上げる。
「そこに、前王サトゥンもいました」
その目は、どこか一点を見つめ、デスパーさまは唇を噛みしめているように思えた。しかし、あなたのお父上がどうであれ、サトゥンさまのしたことと、それはあなた方とは関係のないことだ。
「デスパーさま、続きを」
「…、あぁ、すみません…」
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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時