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【本編】冥府と花の騎士42 ページ16

ことん、と音を立ててトマトのスライスが一枚できる。
「…あのう、デスパーさま?」
「なんです?」
 トマトを切りながら私は、じゃがいもの皮を剥くデスパーさまへ訊ねた。
「修行とは…一体、どのようなことをするのですか?」
「さあ。それは…今ここで話す内容ではありませんからねぇ」
「そう、ですよね」
「それに」
 デスパーさまは、すっかり小さくなったじゃがいもをボウルに入れる。もう片方のボウルに、分厚いじゃがいもの皮や欠片が大量に入っているさまを見て、私はなんとも言えない気持ちになった。
「あなたには、まだお話していないことがありましてね…。修行に入る前に、まずはそれからです」
 ジャーッとボウルに水を溜めて、デスパーさまはそれをテーブルに置いた。
「今日はもう遅い時間ですし、どのみち修行は明日からの方が都合がいい。夕食がてら、その辺り、お話しましょうか」
「はい…」
 まだ話していないこと…。それは、一体何なのだろうか。

 辺りもすっかり暗くなる頃、ようやく夕食が完成した。今日採った野菜で作った簡単なサラダとシチュー。そして、デスパーさまが用意してくださった美味しそうなパン。これだけあれば、充分よね。
「デスパーさま、お夕食ができましたっ」
「あぁ、Aくん。ご苦労さま」
 お部屋までデスパーさまをお呼びし、二人でテーブルにつく。並んだ料理を見てデスパーさまはとっても満足そうだ。
「これは…なかなかのものですね。とても美味しそうです」
「はいっ。デスパーさまが手を貸してくださったおかげで、なんとか完成しました」
 芋は少し小さくなってしまったが。
「うんうん。とても、ありがたく思いますよ。掃除も、丁寧にしていただきましたし」
 嬉しそうにデスパーさまは頷きながら言った。
「はいっ。もちろん、これからは掃除、洗濯、料理…。弟子たるもの、師匠の身の回りのお仕事は全て私が担います!」
「頼もしいですね」
 それじゃ、と二人で手を合わせる。

「いただきます」

 ん、我ながら美味しいぞ。料理なんて久しぶりにしたから少し不安もあったけれど…。
「!!、お、美味しい!」
 一口食べて目を輝かせるデスパーさま。
「本当ですか!」
「Aくんの特技は料理ですか…。これは、今後の生活が楽しみですね」
「ふふふ」
 カチャン、とスプーンを置いてデスパーさま私に言った。
「料理は…ご自分で覚えたのですか?」
「…?、そうですね…いや、誰かに教わった、のかな?」

【本編】冥府と花の騎士43→←【本編】冥府と花の騎士41 ※7/23公開



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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時

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