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【本編】冥府と花の騎士41 ※7/23公開 ページ15

「野菜?」とデスパーさまは聞き返す。
「あぁ、あれは…。庭が寂しいので野菜でも、と」
「もし、デスパーさまがよろしければ、あれでお料理たっくさん作れるはずですっ」
「本当ですか?」
 はい、と私は頷く。
「では、お願いしましょうか」

 その後身支度を整えて、デスパーさまのお庭まで二人で足を運ぶ。ナスやトマト、美味しそうな彩り野菜がたくさん。
「これだけあれば、サラダやスープ、美味しいサンドイッチも作れますよ」
「それは、楽しみですねぇ」
 よーし、と私は辺りを見回す。
「あ、デスパーさま!?」
 すると、いつの間に畑に入ったのか、うんしょとデスパーさまがニンジンを引っ張り始めた。
「あの、私がやりますので!師匠は休んでいてくださいっ」
「こういうものは、皆でやるのが良いのですよ」
 汗を流しながら、デスパーさまは答えた。すると、すぽんとニンジンが抜けてデスパーさまが尻もちをつく。
「で、デスパーさまっ」
「おやおや、土だらけですねぇ」
 はは、と笑うデスパーさまに私は駆け寄る。
「やはり私は、こういう暮らしの方が合っているみたいです」
「デスパーさま…」
 ほら、と鮮やかなオレンジのニンジンをデスパーさまは見せてくれる。
「とても…美味しそうですね」
「これは食べるのが楽しみですねぇ」
 ふふふ、と二人で笑う。そのあとも、私とデスパーさまは野菜の収穫に勤しんだ。ナスも、トマトも、きゅうりもとうもろこしも。

 転んだり、笑ったり、そんなことをしながら。

「ふう、こんなものですかねぇ」
「たくさん収穫できましたね、デスパーさまっ」
「Aくん、頬に土が」
「ぬわ」
 デスパーさまに言われて慌てて頬を拭う。そんな顔を見たデスパーさまは、さらに「ぷっ」と吹き出して笑い出した。
「っぷ。フヒヒヒヒ…」
「え、あの、何か…」
「口のところが、ひげのようで…」
「え?やだっ」
 もう〜、とゴシゴシする私にデスパーさまは笑う。
「ほら、こっちを向いてください」
「ん、」
 ポケットからハンドタオルを出したデスパーさまは、それで私の頬を拭ってくれた。
「ふふふ…。なんだか、懐かしいですね」
「なつか、しい?」
「幼い頃、オウケンも外で走り回っては、こうして顔に土をつけて帰ってきたものです」
「オウケンさまが…。って、そんな幼い男の子と一緒にされても…」
「あら、拗ねちゃいました?」
 デスパーさまは優しく笑う。

「さあ、顔も綺麗になりましたし、次は調理ですね」

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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時

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