冥府と花の騎士 2章 (ページ13)

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【本編】冥府と花の騎士３９ページ13

この国に生まれたデスハーさまは、一体どのような思いでここまで生きてきたのだろうか。

　どうして、こんなにも背負わねばならないのだろうか。

　読んでいく最中、気付けば涙が溢れていた。紙面に落ちた雫は、静かにシミを作って消えていく。足元には花が一つ、また一つと咲いた。
「…っ」

　日記をそっと抱きしめる。

　私には、何ができる？

　この命は、皆さんに助けていただいたもの。それをもって、何ができる？

「…強く、ならなくては…」

　私も、共に。皆さんと…あなたと共に、この国を守りたいです。あなたが守ろうとしているものを、私も守りたい。

　あなたが背負うそれを私が代わりに持つことなんてきっとできないでしょうけれど…。それでも、倒れそうなその時に、私に支えられるくらいの力があれば。強さがれば。

　あなたが、その心も身体も全て、受け止めることができるような。

　隣に立って、同じ景色を見て。

　その手を、握ることはできやしないだろうか、と。

　こんなちっぽけな手でも…あなたを、支えたいから。

「いつか、必ず…」

　今度は、私が力になりたいのです。

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　書庫の扉が開いていたので、デスハーは覗きに行った。
「戸締りをしないとは不用心め…」
　ここの見張りは誰だ、と疑問に思いながら部屋を覗く。広い書室の窓辺に、何やら誰かが一人腰かけて眠っていた。

　近づいていき、顔を見やる。やはり、Aだ。床にも机にも積みあがったその書物の数々に、今日一日ここに閉じこもって読み漁っていたのか、とため息をつく。

　食事をとったのか、などと柄にもなく彼女を案じる自分がいるが、なぜそこまで気にすることがあるのか自分でも不明だった。そして、気付いたのは蓋をあけられた木箱の存在と、彼女が手に持つ一冊の本。

　読んだ、か…。

　デスハーは、額に手をやる。やはり、ここに置くべきではなかったか。失態である。こんなもの、読まれるなど情けない以外の何ものでもない。王になったその瞬間にでもやはり燃やすべきだった。

　忌々しい。

　これは、まだ幼き、弱き頃の自分が書いた掃き溜め。父への憎悪も、愛も、悲しみも、全てを吐き出した不潔なものだ。こんなものでこの国の歴史を学ばれては困る。
彼女の手からそっと日記を取り上げようとした時、その頬に光る跡があるのに気付く。きらり煌めいたそれは、涙の跡。

「なぜお前が…」

　思うより先に、そっと手は伸びていた。