あなたのその手が、力をくれる。2 ページ12
指先に触れた確かなそれに、デスハーは少し戸惑う。
「、なんだ…」
彼女の小さな両の手のひらが、そっとデスハーの指先を包んだ。
「何を…」
「力を、もらっています」
なんだ、とデスハーは疑問符を頭に浮かべる。けど、それとは裏腹に、触れられた指先は微かに熱を持つ。なぜ?
「デスハーさまは、お強いです。とっても、強くて勇敢な、王さです…だから…」
だから、とAは続ける。
「こうして触れていると、なんだか私まで強くなれそうな気がするのですっ。勇気をもらえます。そして、頑張れます…」
それは酷く優しく、握る力。
「お前は本当に、…」
柔らかい両手で握られたその手を、そのままAの頬まで持っていく。少しだけ、Aは驚くがやがてゆるりと目を細め、そこに己の頬を寄せた。
「しようのないヤツめ…」
ふっ、と力なく笑うデスハーの手に、乗る体温。それを離したくないと、心が叫ぶのはなぜだなのだろうか。
「私を、置いて…逝かせはせんぞ」
もう一度、零れたデスハーの一言に彼女は頷く。
「…必ず」
デスハーの手は、硬く大きく、強い手。しかし、芯に眠る優しさも、温かさも併せ持つ王の手。Aはずっと、その手が好きだった。
明日は、この手を使わせやしない。血を浴びるのは私だけで充分。国を守るのは王の役目だが、王を守るのは、我々騎士の役目ですから…。
あなたに、あの金棒は振らせない。そう簡単に、王の首を取らせてなるものか。
____その手が血に染まることも厭わず、少女は己の武器を振るう。他ならぬ王のために
【本編】冥府と花の騎士39→←あなたのその手が、力をくれる。1
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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月31日 2時