同じ夢を見ようか。【ｉｆ】３ ページ1
※一作目の続き
「では、歌を歌いましょうか」
「歌！！」
私の台詞に、オウケンさまが嬉しそうに返事をする。そして歌い出す。
「いちばんにひかれ〜わらわれても〜」
「オウケンさま、静かに、静かに！！」
大きな声で歌い出したオウケンさま。いつの間にかデスパーさままで参加するのですぐに制止の声をかける。
「ね、子守歌、歌いますから…」
「兄者も？」
デスパーさまがそう言ってデスハーさまの顔を振り向く。
「いや、オレは歌わん…」
「じゃあ寝ないです」
「…、」
ふひひ、とデスパーさまは笑った。
「Aと一緒に歌ってください。そうしたら寝ます」
「兄者、歌って！」
デスパーさまとオウケンさまの突然の無茶ぶりが始まる。デスハーさまが歌？
聞いたことないわよそんなの…。
「今夜、限りだぞ」
むう、とデスハーさまは少しだけ恥ずかし気にそう言った。ま、まさか本当に？対する弟たちはとても楽し気で。
「やったです！」
「きゃはっ」
そして私を呼ぶデスハーさま。
「おいA」
「は、はいっ」
「ゆくぞ」
「は、はい！！」
そうして、初めて歌った。ぎこちなく、でも、確かに優しいメロディーを。初めはずれていた音もリズムも、少しずつ揃っていく。
こんなに、優しい声で歌うのですね。
たまにこちらをちらりと見ながら、でも目が合えばすぐに視線を逸らすデスハーさま。
リズムに乗りながら、デスハーさまの手はデスパーさまの背中を叩いていた。私も同じようにオウケンさまの髪を撫でる。
「ふわ…、」
「お前まで眠くなってどうする」
「はっ、すみませ…」
思わずあくびが出た私に、デスハーさまは笑った。
「フッ、途中で寝そうになっていただろう。声がくにゃくにゃとしていた」
「すみません…」
いつの間にか弟たちお二人は夢の中。私とデスハーさまは、顔を見合わせてくすっと笑う。
「ようやく寝たな」
「ありがとうございます、デスハーさま」
本当に、お優しいお兄様だなあ。しばらくそんな風に見ていれば、ぱっと視線を逸らされて「向こうを向け」と言われてしまう。
「で、でもオウケンさまがこんなですし…」
むぎゅ、と片腕にひっつくオウケンさまを振りほどかないと向こう側を向くことはできない。それを言われたデスハーさまは、ぐぬ、とした顔をされる。
「オレも、動けん…」
そんな状態に、二人で笑うしかなかった。
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作者名：アユミ | 作成日時：2022年5月31日 2時
