冥府と花の騎士 (ページ30)

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【本編】冥府と花の騎士２２ページ30

最近、あまりAを見かけないな。書類に目を通しながらデスハーは思った。まあだからなんだ、という話だが、一応この城を出て行く際には一言あって欲しいものだとは思う。まさか、もういない？
「で、デスハーさま…」
「あぁスマン。何の話だっけか」
「はい。町の橋を再建するお話ですが、予算を見直しましたところ…」

　今までは城内をうろちょろしているところは何度か見かけた。そういえば、オウケンと町に出てからであろうか。あまり彼女の姿を見かけなくなったのは。やはりもうあれから町にでたか？はて、最後に見かけたのはいつやら。自身もこのところ、国の再建やら何やらで目が回るくらい忙しかったのだ。町へも視察に行き、役所や行政に顔を出す機会もしばしあった。

　まあ、だからなんだという話。あの子が救われて、きちんと己で生きていけるようになればそれでいい。生きてくれれば。

『私は、この力を、この国のために使いたい！』
『強くなりたい』

　あの真っ直ぐな目。どうして何度も思い出すのか。

『あなたのような』

「…でして。やはり、一度、町内の皆と話し合う必要があるかと思いまして…。あ、あのデスハー様…？」
「…ッ、」
　バキィ、と握っていたペンが折れた。
「ヒィッ！？」
　ざわつく城内。デスハーはそれに気付くと。はぁー、と一つため息をつく。
「…すまん。続けてくれ」
「…っはい！」
　職員が怯えたように、ページをめくり出す。あぁ、何の話だったか…とデスハーは半分聞き流していた先ほどまでの流れを思い起こした。
「…でして、再度デスハー王に、もう一度ご覧いただきたいと…」
「また視察…ねぇ。直近だと空いてる日はそんなないぞぃ。おい、スケジュールはどうなってた」
　直属の部下にデスハーが声をかけると、すぐに部下が答える。
「っは。ご確認します。今週の予定は…」
「デスハー様！弟君のデスパー様がお呼びでございます！」
　部下が予定を読み上げようとしたその時、部屋の外で見張りをしていた部下から声が上がった。
「ったく次から次へと…」
　デスハーはまた大きくため息をつくと、面倒そうに「通せ」と一声かける。
「では、お連れします」
　そう告げられ、部屋の扉が開かれる。
「ったく、なんだこんな真昼間から…。お前の相手をしているヒマは…」
　そう言いかけて、デスハーの言葉は止まった。部屋に連れられたデスパーの隣にいたのは、Aだった。
　